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経営は編集力(前編)

2014年5月25日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

突然ですが、「キュレーション」という言葉を知っていますか?

最近読んだ「石ころをダイヤに変える『キュレーション』力」という本で非常に感銘を受けた考え方です。日本語でいえば、「編集力」。もっとわかりやすく言えば、物事を切り取ったり、くっつけたりして新たな価値を作り出す力です。

最近の世の中の動きが激しすぎて、多くの企業人がどういう方法をとれば経営がうまくいくのか明確な答えが見つからず、不安の中で経済活動を行わざるを得ないという状況にあります。そんな中、このストレートな問いにしっかり答えてくれる考え方ではないのかと思いました。

例えば、あれだけ世界最強の名声をほしいままにした日本の電機メーカーが束になってかかっても、I‐pod,I-phone,I-padという限られた商品しか持たないアップル一社にかなわない。こんな状況がこのところ続いています。

アップルにあって、日本の電機メーカー企業にないもの、それが「キュレーション」力だといいます。

冷静に見ると、アップルのI‐pod,I-phone,I-padに使われている技術は、日本の電機メーカーの持っている技術からすれば何も恐れるほどのものではありません。というよりも、技術のレベルでいえば、日本の企業の機器に詰まっているそれのほうがずっと高いものばかりのようです。

それなのにもかかわらず、世界の消費者は、そのようなテクノロジーの塊である日本製品には目もくれず、アップルの製品に殺到しているわけです。このことを捉えて、著者は「二十世紀はあらゆる面で「より多く」「より高度に」を追求してきた時代でした。その結果、私たちはある時から「過剰な世界」に入ってしまったように思えます。」と言っています。

つまり、現在の技術レベルは、受け手である現在の人間の使いこなす能力に対してTOO MUCHであって、もうそんなにいらない、もっとシンプルでかまわない、誰かフィルターでろ過し、選んで、フォーカスを絞り込んで今までにない使いやすいものを提供してほしいと思っているのではないかということです。

この事実を示されて思い出したエピソードがあります。高校時代に私はガチガチの文系だった(当然今も)のですが、ガチガチの理系だった友人との間でした会話です。

 秋山「数学の時間になると頭が痛くなるような俺たち文系からするとあんたら理系はすごいと思うよ。なぜって、このMDやDVDの機械は、俺たち文系がいなくたって存在するけど、あんたらがいなければ絶対に存在しないもん。文系なんて、理系の人たちが作りだすものに寄りかかっておこぼれを頂戴するだけの存在だと思うな。」

 友人「いや、そうでもないと思うよ。俺たち理系からすると文系の発想って時々スゲ~なって思うんだよ。しかも、俺たちは機械について勉強したいって気持ちにはなるけど、それをどうやって売ったらいいかとか考えたり、実際にそれをお客さんに売ったりはとてもできないと思うもの。というかそういうことに全く興味がないんだよね。だから、文系もいないと世の中成り立たないと思うよ。」

 秋山「いや、でもMDとかDVDとか、こんなすごい製品だったら作るだけで勝手に売れるから理系だけでいいんだよ。絶対!」

不思議と今でもこの会話のことを鮮明に覚えています。まさに、この会話はそれから20年後の現在の経済社会を暗示していたともいえそうな内容だったのです。

この本の中では、キュレーションの力を「リベラルアーツ=教養」という表現でされていました。まさにそれが「文系」力ということなのではないかと思いました。

「文系」と一括りにしていますが、教養とは、政治、経済、歴史、自然科学、音楽、芸術などありとあらゆることを浅く広く学んで広い視野を身につけることと考えるべきではないでしょうか。

またも著者の言葉を借りれば「教養とは、人々を何らかの隷属や制約から解き放ち、より自由に、より豊かな生き方へと導くための見識」ということになります。

私たちは実際にこの社会において、業界、会社、学校、家族などあらゆる人間関係から生じる慣習なり、仕組みなりに隷属させられ、その枠に制約されています。そして、それは自分自身では気づかないからまた厄介です。ましてや、専門分化したひとつのことにどっぷりとつからなければならない理系の発想と言うのは、どうしても現在の日本企業のおかれた状況に陥りがちな性質を持っていると言えます。

そこで、社会や企業は本当の意味での文系力、すなわち「教養」の力を養うことを自らの組織に取り込む仕組みを作り出す必要があるのだと言うことを強く印象付けられました。

実は、そのようなことを実践しているのは何もアップルだけではありません。日本の企業にもキュレーションを実に上手に経営に生かしている経営者がいらっしゃいます。

次回は、その一人であるセブンアンドアイホールディングスの鈴木敏文会長の著書を紹介しながらその実践に迫ってみたいと思います。

 

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