日本人と英語

機械翻訳のいま

2016年12月30日 CATEGORY - 日本人と英語

先日、書籍紹介ブログにて「英文秒速ライティング」という書籍をご紹介しましたが、この本は英語教育そのものについての非常に貴重な気付きを私に与えてくれました。

その気づきについては次回詳しく書いていこうと思いますが、今回はその前に、本書の学習法の前提となっているMT(機械翻訳)がどこまで進んでいるのかということについて実証してみたいともいます。

まず、私たちが無料で使用できる機械翻訳は大きく分けて二つあります。

Yahoo 翻訳とGoogle 翻訳です。

この二つのインターネットサービスですが、その仕組み自体が全く異なります。Yahoo翻訳は、文法分析型、Google翻訳は、対訳(コーパス)型です。

文法分析型というのは比較的分かりやすいと思いますが、文法のルールに沿って、文字通り機械的に翻訳する仕組みです。この方法は、英語やドイツ語といった同じ言語族に含まれる言語距離が近い言語間であれば、非常に威力を発揮します。

ですが、日本語と英語というように、あまりに言語距離が離れた言語間ですと、うまくいかないという性質があります。

それに対して、対訳(コーパス)型というのは、言語というのは「決まり文句の組み合わせ」であるという考えにのっとり、様々な表現の単位を集めておいて、それらの組み合わせのパターンを言語間で一致させることで翻訳する仕組みです。この方法であれば、日本語と英語という言語距離が離れた言語間であっても、「それなり」の力を発揮しますが、その構成要素がコンピューターに記憶されていなければ、一巻の終りとなってしまいます。

本書の中でも、実際の翻訳事例が出ていますが、私自身実際に実験してみました。

「Language Villageは、日本人が外国語として英語を身に付けるためには、本質的に二つの段階を踏むしかないという信念に基づいて運営されています。」という日本語をまずは、Yahoo翻訳に入れてみます。

「Language Village is run based on faith to but go through two stages essentially so that a Japanese acquires English as a foreign language.」となりました。

「本質的に二つの段階を踏むしかないという」というところの訳が「 to but go through two stages essentially 」というように、ほぼ意味不明となってしまっています。

続いて、Google翻訳に入れてみます。

Language Village, in order that the Japanese learn English as a foreign language, essentially is operated on the basis of the belief that there is only a step on the two stages.」となりました。

先ほどのYahoo翻訳の「 to but go through two stages essentially 」のように、フレーズとして全く意味不明というところはありませんが、「日本人が外国語として英語を身に付けるためには」という副詞節は、「二つのステップを踏むしかない」という「信念」という名詞の形容詞節の中の動詞を修飾しているのにもかかわらず、「Language Villageは、運営されています。」という主文の動詞を修飾してしまっていることで、逆に、より大きな問題を生じさせてしまっています。

この二つを見ると、どちらもそのまま使用することは全くできないレベルですが、Google翻訳のほうが、文の構造自体がめちゃくちゃになっているという意味で大きな問題だと言えるような気がします。

そこで、最初の日本文を英語の文型に従わせること、および修飾する言葉の対象が明らかになるように並べることにより「中間日本語」を作ってみます。

「Language Villageは、次のような信念に基づいて運営されています。それは、日本人が外国語として英語を身に付けるためには、本質的に二つの段階を踏まなければならないという信念です。」

具体的には、「信念」をながなが説明しているところを、短い二つのSVCの文(一つ目はSVOの受身)を並べることにしたのと、「踏むしかない」という表現をもっと単純に、「踏まなければならない」としたことです。

まずはYahoo翻訳です。

「Language Village is run based on the following faith. It is faith to have to go through two stages essentially so that a Japanese acquires English as a foreign language」

そしてGoogle翻訳。

Language Village is operated based on the following beliefs. It is, in order that the Japanese learn English as a foreign language, is a belief that must be essentially stepped on the two stages.

ご覧の通り、Yahoo翻訳については、ほぼ100%の英文となりました。一方で、Google翻訳に関しては、先ほどよりも一層分かりにくくなってしまいました。

「Yahoo翻訳(文法分析型)」と「中間日本語」の組み合わせ。

これは、日本語と英語のような言語距離が離れた言語間の機械翻訳が大きく飛躍するための非常に重要なキーファクターになる予感がします。そして、それは英語学習のキーファクターでもあることも同時に成り立つと言えると思います。