日本人と英語

決して遅すぎることはない

2015年10月18日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログで「英語を学ぶのは40歳からがいい」をご紹介しましたが、本書の主張と、いわゆる「臨界期仮説」と真っ向から対立することになりますので、ここでこの問題に対する理論的な考察を深めたいと思いました。

そして見つけたのが、この本に続いてご紹介した「『達人』の英語学習法」という本です。

臨界期仮説というのは、「何かを習得する際、その時期を逃すと習得が不可能もしくは、著しく困難となる時期が存在する」という現象が言語習得に関しても当てはまるはずだとする仮説のことです。そしてこれこそが、多くの日本の親御さんを幼児英語教育に走らせている大本の考え方です。 したがって、この仮説が正しいとすると、「英語を学ぶのは40歳からがいい」はあり得ないということになり、大人が英語を学習するというモチベーションを著しく下げることにもつながります。

私自身も、「英語を学ぶのは40歳からがいい」の著者も、経験的にこの仮説を否定するものですが、今回、この「『達人』の英語学習法」においてその点についてデータを用いて詳しく書かれていたので以下にまとめてみたいと思います。

「(様々な研究者による英語学習を開始した年齢と学習効果の研究データをあげて)年齢が上がるにつれて、「達人」レベルにまで到達する数は少なくなる傾向は見受けられるが、しかし例外もかなりの数見受けられる。そのことが何を意味しているのか。例外が少なくないということは、少なくとも『その時期を逃すと習得が不可能もしくは、著しく困難となる時期が存在する』ということは否定されるということだ。そして、重要な要素としてあげるべきは、学習開始年齢というより、職業にかかわる動機づけや訓練の仕方のほうではないかと推察される。」

そして、実際にそのようなことを実証する実在の方の例を挙げられています。

一人目は、名講演と達意の英文で禅の思想を世界に広げた鈴木大拙氏です。彼は、金沢市に生を受け、英語母語話者との接触もほとんどない状態で、全くの独学により英語を習得していきました。彼の話す英語には確かにノンネイティブの英語の特徴も認められますが、完成度はとても高く、彼こそが冒頭で定義した「達人」レベルの英語を話す人です。

もう一人は、DJで有名な小林克也氏です。彼は、意外にも中学から英語の学習を開始したといいます。そして、彼の発話の一部を英語ネイティブ6人に聞かせてみると、5名がニアネイティブ以上だと判定したそうです。

こうしてみると、臨界期と呼ばれる時期を過ぎたとしても英語学習に成功することは十分に可能だということが証明されたと言えるのではないでしょうか。

したがって、少なくとも言語習得に関していえば、「臨界期仮説」は否定されるべきであると思います。

そして、学習開始年齢は、例えば、動機づけや訓練の仕方のような様々な言語学習の成功要素の一つに過ぎないと考えられ、その要素でのハンデは十分に他の要素の割合を高めることによってカバーできるものであると言えると思います。 このことは、一般的に英語教育に関わる人間が、経験的に理解していることと一致するのではないかと思います。

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆