日本人と英語

複言語主義とは

2018年6月6日 CATEGORY - 日本人と英語

以前に書籍紹介ブログにてご紹介した私の尊敬する「英語教育の4人の番人」による「英語だけの外国語教育は失敗する」よりいくつかテーマをいただいて書いていきたいと思いますが、今回取り上げますのは、鳥飼玖美子先生が取り上げられた「複言語主義」についてです。

まずは、この「複言語主義」の定義から。

鳥飼先生の解説では複言語主義とは、「母語以外の複数の言語を個人の中に共存させ、文化的コンテクストが異なる多様な言語体験を相互に関連させて新たなコミュニケーション能力を作り出すこと」とされています。

もっと具体的に言うと、「英語は英語、スペイン語はスペイン語というようにバラバラに学ぶのではなく、学んだ言語を自分の母語を含め相互に関連付けながら新たなコミュニケーション能力を創出する」ということのようです。

このことについては私は、次のような体験から体感的に非常によく分かります。

私はアメリカに留学した時、教養課程の外国語としてフランス語をとりました。結構一生懸命取り組みましたので、だんだんフランス語をものにしたいと考え、アメリカ留学を終えて日本に帰国する前の三か月間をパリでのフランス語学留学に費やすことにしました。

このパリでの3か月間の滞在中は、フランス語を学びに来ているわけですから、様々な国からの留学生と交流するときには基本的にフランス語を使用するように心がけましたが、どうしても細かいことが伝わらない場合、英語を使用してその目的を達することがしばしばありました。

この感覚が私には何とも言えない心地よいものだったのです。

どのように心地いいのかと聞かれてもなかなか上手に説明できないのですが、アメリカでの英語だけのコミュニケーションとは比べ物にならないくらいコミュニケーションの豊かさを感じられたような気がするのです。

それは、フランス語でもなんとかなるが、英語もできる、もちろん日本語では当たり前と自分が活用できるコミュニケーションツールがいくつも準備されているという精神的「余裕」とでもいうような自分の頭の中の空間が何倍にも広がったような感覚です。

別の言い方をすれば、自分の中いくつもの異なるものを見る視点を手に入れたような感覚でもあります。

鳥飼先生の複言語主義の定義を聞いて、このことを思い出し、この精神的余裕こそが、複言語主義の意義の一つなのではないかと思いました。

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆