日本人と英語

全てのルールに理由をつけよう

2017年8月20日 CATEGORY - 日本人と英語

前々回、前回と英語冠詞大講座から英語の冠詞の性質について考えてきましたが、今回も引き続きこのテーマについて考えたいと思います。

今回は、冠詞に限らず、文法全般についてのルールの理屈についてです。

ランゲッジ・ヴィレッジの2泊3日で中三文法を血肉にする講座では、基本的に「すべて」のルールについて理屈を添えて教えています。

「すべて」と書きましたが、大げさでなく、本当にほぼすべて何かしらの理由付けを必ずしています。そうでなければ、二泊三日で知識を詰め込み、それを使いこなすには頭の中に整理することができないからです。

ですが、文法というのは誰かが、「こうだ」とはじめに決めた型があるものではなく、自然発生的に生まれ、歴史の中で変化し、様々な別言語からも影響を受けて今の形になっているので、それらすべてに確実な「正解」があると考えることはできません。

それでも私は「すべて」のルールについて理屈を添えるように努力をしています。

つまり、確実な理屈が見当たらない場合には、すでに手持ちの文法項目を活用して、そのルールを説明できるような「こじつけ」を行うのです。

そもそも、文法の体系におけるルールなんて、最大公約数的な理屈に過ぎないのですから、学習者の頭が整理され、納得をもって記憶できるようになれば十分だと考えているからです。

この私の行為を理解していただくために資する話が、冠詞を絡めた解説として本書の中にありましたので、引用してみます。

「常識的には初めて出てきた名詞には不定冠詞がつくのが相場になっています。ところが、比較的まれなケースではありますが、小説などの書き出しで、聞き手に何の情報も与えていないところに、いきなり定冠詞付きの名詞を導入するレトリックがあります。筆者はこれを『特定化の強要』と呼んでおり、そのような定冠詞を『いきなり定冠詞』と心の中で名付けています。例えば、川端康成の『雪国』の冒頭、『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』の英訳は、The train came out of the long tunnel into the snow country.となっており、いきなり出てくる3つの名詞には全て定冠詞がついています。初めて出てきた情報であっても、既知のものとして仮定して話の続きを聞いてほしいという書き手側からの、いわば『特定化の強要』なのです。」

筆者は、「これを『特定化の強要』と呼んでおり、そのような定冠詞を『いきなり定冠詞』と心の中で名付けています。」と言っていることからわかるように、「初めての情報なのに、なぜ不定冠詞でなく、定冠詞なのか?」という疑問に対しての回答の理屈を自ら作り出しているということになります。

文法体系は、歴史の中で様々な人によってこのようなことが積み重ねられ、その中で最も分かりやすい理屈が生き残って出来上がっているのです。

このことをもって、最大公約数的な理屈と私は言いました。

であるなら、まだ誰も最大公約数を導き出していない項目については、正々堂々と、自分の理屈を作ってしまえばいいのです。

たとえ、それが実はすでに誰かによって導き出されており、自分がそれを知らなかっただけだとしても、理屈を伴わずただ、丸暗記するよりもよほど記憶に資することになるはずです。

今回の著者の一文から、私自身大きな勇気をもらったような気がします。