日本人と英語

企業における社員の英語力評価

2018年1月3日 CATEGORY - 日本人と英語

前々回、前回に引き続き、「企業・大学はグローバル人材をどう育てるか」からテーマをいただいて書こうと思います。

前回の記事にて、企業研修の成功の前提として、「それぞれの社員さんに求められる『本当のニーズ』を把握すること、社員さんの現時点での英語力を的確に評価すること」が必要であると指摘しました。

第三回目の今回は、その「社員さんの現時点での英語力を的確に評価すること」について考えていきます。

まず、本書では、日本の企業が社員の英語力を評価するために使用しているテストのシェア(2011年のデータ)が紹介されていましたが、その結果は以下の通りです。

・TOEIC     (99.2%)   

・その他     (6.5%) 

・英検      (4.1%) 

・TOEFL       (4.1%) 

・社内独自のテスト(2.4%) 

ある程度予想はしていましたが、TOEICのほぼ独占という状況です。ここまでのTOEICの一人勝ちをどのように考えるべきかですが、私は二つの側面があると思っています。

一つは、「比較可能性」の側面です。

企業間で、社員間でスコアを比較するためには共通の試験のスコアでなければ比べようがありません。従って、比較可能性で考えるのであれば、一つのテストが独占的状況を持つことは当たり前の結果のように思割れるかもしれません。

しかし、私はこの側面については大きな疑問を持っています。

入学試験や入社試験のように、一定のレベルで人員を落とすことを目的としているのであれば、この比較可能性には大きな意味があると思いますが、すでに入社している社員の英語能力の評価については、その意味はそこまで大きくないと思うのです。

それよりも重要なのは、二つ目の「評価の精度」の側面だと思います。

そもそも企業が社員に対して英語力評価テストを課すのは、社員さんの現時点での英語力を的確に評価して、目標とのギャップを把握するためです。ですから、一番精度が高いのがTOEICだということがはっきりしているのであれば、比較可能性を考慮してTOEICが独占する結果になっているということであれば、全く問題ないと思います。

しかし、どれほど綿密な研究をもとに開発されたテストでも、あらゆる技能を正確に測定するテストなどあり得ません。特に、TOEICは机上のテストであることから、受容能力のみを測定することで、発信能力を含む「実用能力」を統計的に推定するものでしかありません。

そのことからすると、全方位的な英語力の評価に対応することができないTOEICをほぼ唯一の判断基準としてしまっている日本企業の現状には大きな問題があると言えます。

そのため、日本企業が自社の社員の英語力評価を行うために取るべき方策は、TOEICを「読む」「聞く」という受容能力の評価の比較可能性のために活用し、「話す」「書く」という発信能力の評価については適切な評価テストを自社の状況に応じて選定するという姿勢が必要なのではないかと私は考えます。

要するに、前回の記事にて明らかにしたように、その適切な組み合わせを自ら企画・立案することができる研修担当者の存在が重要になると思うのです。

あくまでも、英語能力評価テストは、英語研修を成功させるためのフィードバックの材料として機能させるべきであって、他者と比較して一喜一憂するための材料にすることを目的にしてはいけません。

その企業の事情に合わせて、英語研修と英語評価テストを一体として管理・運用するという姿勢が何より大切だと思います。

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