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お寺の未来

2017年10月2日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

だいぶ前に、「お寺さん崩壊」という本をご紹介して、「檀家とお寺さんの関係」の将来について考えました。

その中で、この問題の本質は、「先祖」や「家」というものに関心を寄せる機会を失った世代とそのような変化に対応できない寺、両方の問題だととらえ、以下のような感想を述べました。

「お寺さんが本当の「法人」に姿を変え、きちんとしたガバナンス機能を備えたうえで、「正当なコストを負担することに同意する一部の顧客(檀家)」に対するサービスと「圧倒的に低いコストしか負担できない大多数の一見さん」に対するサービスの両方を提供できる組織に変わらざるを得ないと思います。」

その記事を書いていた段階では、具体的な行動を移している事例について知ることはできませんでしたが、先日偶然目にしたアエラの記事、この件について実際に行動に移られた住職のことについて書かれていましたのでご紹介します。

「400年以上の歴史を持つ埼玉県の曹洞宗見性院の23代目住職橋本英樹氏(51)は「檀家制度廃止」という、江戸時代から連綿と続く仏教のスタイルに一石を投じた。2007年、42歳の時に先代住職だった父の跡を継ぎ同院の住職となると改革に乗り出し、11年4月、見性院の檀家総代が集まる役員会に「檀家制度の廃止」を諮り12年6月、檀家制度の廃止に踏み切った。宗教・宗派、国籍すら問わない、誰にでも開かれた「みんなのお寺」にした。同時に、400軒近くあった檀家との関係をいったん白紙に戻し、名称も檀家から「信徒」に変え信徒に対して「明朗会計」と「サービス」を重視し、寺院の収支を公開した。その結果、永代供養の需要も増えた。葬儀・法事の回数は以前の3~5倍。見性院の信徒は約800人と「改革」前の2倍となり、寺の収入基盤は確保された。」

この記事では、まさに前回のブログを書いた時点では確認できなかった具体的な「お寺の未来像」が見て取れ、理想的な解決策のように思えました。

しかし、先日2017年9月23日土曜日の日本テレビのウェークアップぷらすでも、このお寺について取り上げられていたのですが、そこでは、このアエラの記事とは別の視点から問題点を指摘するような放送でした。

その問題点とは、旧檀家と新たな信徒との不公平感です。

このお寺の本堂や客殿などは、400年にわたって面々と続く檀家のお布施によって建立されたものです。それなのにもかかわらず、これまでの関係をご破算にし、新たな信徒たちと同じ扱いというのはいかにも不公平ではないかという視点です。

この問題は、お寺が「宗教法人」という形であり、檀家は株式会社の株主のように法律的にお寺の所有者ではない立場の下、「気持ち」によってのみ金銭的負担をしてきたというところに根っこがあると思います。

法律的に言ったら、旧檀家のお寺に関する権利は保証されない。しかも、現状の檀家だけではもはやこのお寺を維持できなくなってしまったという事実がある。

この構図の中で、この住職は従来の「気持ち」をある程度犠牲にしても、お寺の存続を優先したということなのだと思います。

であるならば、「気持ち」には「気持ち」で対処することでしかないのではないか、つまりこの現状を打破するためにその犠牲を伴うことへの理解を旧檀家から得られるよう住職が努力するしかないのではないか。

しかし、この番組において住職の姿勢を見る限りでは、その部分が見えず、少し一方的な感じがしたのは残念でした。

ですが、「お寺の存続」という意味においては、この見性院の事例は数少ない具体的な「お寺の未来のカタチ」の一つであることは間違いないでしょう。

 

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