代表ブログ

巨象も踊る

2015年11月8日 CATEGORY - 代表ブログ

IBM        

 

 

 

 

 

 

 

        皆さん、こんにちは。 以前に、「道端の経済学」という本を紹介したときに、その記事の最後を次のような疑問で締めくくりました。 「本書を読んでいて最後まで晴れなかった疑問があります。それは、このような鋭い戦略で成功をおさめた中小企業が成長した結果、大企業となった時その企業は鋭さを失うことが必然であるのかという疑問です。現実の問題として、今後のアップルに鋭さを求め続けることができるのか、という命題です。」

その疑問に答えてくれる一冊を読みました。 かなり古い本ですが、メインフレームコンピューターからPCに世の中が変わってしまうという激変による死のふちからみごとIBMを再び輝かしい企業へと変革させた経営者ルイス・ガースナーによる「巨象も踊る」という本です。

企業の規模が大きくなるということは、経営資源の充実の結果であることで、本来喜ばしいことに違いありません。しかし、それとともに、本書を読んで非常に印象づけられるのは、統合の困難性が付きまとってくることから逃れられないという事実でした。 ですから、真の統合の象徴である「トップ」の役割が、大企業にこそ必要となるということです。 では、その「真の統合」とはどういうことでしょうか。 それは、「市場こそが、すべての行動の背景にある原動力である」という原則をその企業の構成員一人一人が常に認識していることです。 ですから、大企業のトップの役割として最も重要なことは、その原則を構成員に常に認識させる仕組みを作るということになります。

もちろん、このことは、多くの経営学者、経営者も語っていることであり、何も目新しいことではないかもしれません。ただ、本書の価値は、IBMという悪い官僚制度によって統合の困難性が顕在化した巨大組織に対峙し、現実の課題から逃げずにその原則を貫き通し、課題を克服して再び輝かしい企業によみがえらせた著者本人が自分の言葉でその一部始終を描いていることです。 そして、そこからひしひしと感じられることは、「巨大組織のCEOを引き受けること」は、単純に喜ばしいことではなく、捨て身の「覚悟」以外の何物でもないということでした。