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なぜ日本は生産性が低いのか

2018年4月27日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

江戸時代から続く日本の文化財の補修に関わる4割の職人を抱える業界最大手企業の社長が生粋のイギリス人だということをご存知でしょうか。

イギリス生まれで、長年金融業界で活躍をされたのですが、2007年より上記企業である小西美術工芸社に入社され、2011年より社長に就任され、同時に日本の伝統文化を守りつつ、伝統文化財を巡る行政や業界への提言を続けられています。

そんな異色の経営者であるデービッド・アトキンソン氏の「新生産性立国論」を読みました。

私たちは、小さなころから日本は裕福な国だ、一流の国だと教わってきました。しかし、2016年の日本の一人当たりGDPは世界28位にすぎません。

日本の人口は1億人を超えているので、いまだに国全体のGDPは、アメリカ、中国に次ぐ3位なのでそれほど意識はしないかもしれませんが国際比較のデータはいつの間にかそうではない日本の状況を示し始めていることを理解する必要があります。

しかし、日本人は他の国民に比べて勤勉だし、時間にも厳しいため「生産性」は低くないはずだという強い思い込みがありがちですがこれが現実のようです。

本書での彼の主張は正直衝撃的なものでした。

そして私が衝撃的だと感じたということは、少なからず私も日本人の生産性はそこまで低くないはずだという思い込みをしている一人だったということになります。

著者は、日本の生産性の低さを改善するためには、そもそも「生産性」をしっかり定義する必要があるが、他の先進国では当たり前に共有されているこの理解が日本ではかなりの知的レベルを持つ人にも共有されていないと指摘します。

生産性とは、一人当たりのGDPを言います。GDPとは一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額です。そして、付加価値とは、生産活動によって新たに生み出された価値、すなわち「労働者の給料」「企業の利益」「政府などが受け取る税金」「利息など」です。

その上で、著者は日本人が生産性と混同しそうなキーワードとして「利益」と「効率性」をあげています。

「利益」とは、付加価値の一部でしかありません。しかもそれは企業の側から見れば、自分の取り分ということになりますが、労働者の給料との間でトレードオフ関係にあるにすぎず、国全体としては、どれだけ利益を出そうがまったく生産性を高めることにはつながりません。

ちなみに、現在の日本経済は企業における利益は増えているが、その分労働者の給料水準は低く抑えられているので、決して生産性が上がっているとは言えないのです。

「効率性」とは、ある作業を労力や時間、そして資源の無駄なくこなすことです。ですから、仮に無駄なくたくさん作ったとしてもそれによる売上が少なければ、「効率性」は高いけど「生産性」は低いということになります。

例えば、日本では牛丼を大量に売りさばく「効率性」の高いビジネスが構築されていますが、スタッフさんはほぼアルバイトで最低賃金も国際水準からすると低いこともあり、企業の利益、従業員の給料の水準もともに低く、「効率性」は高いのに「生産性」は非常に低いということになります。

つまり、「日本人は他の国民に比べて勤勉だし、時間にも厳しいため「生産性」は低くないはずだ」と思っている多くの日本人は効率性を自慢しているだけで、生産性の向上には無関心だったということになります。

お恥ずかしながら、私もビジネスを学んだ身であって、生産性の定義は当然知っているつもりではありましたが、どうしても企業の側からの視点にとらわれた見方が染みついていたように思います。

そういわれると、日本の多くの企業で「当たり前」に行われている「不可思議」な行動は、それをやめると宣言しただけで、かなり潜在的な生産性向上の余地となるように感じます。

上司が帰らないからと言って、やることがないのにただ仕事をしているふりをすること。会議とは名ばかりで誰も発言せずにただ決まったことを報告されるためだけに人を集める会議。

日本のビジネスマンが、それらをやめ、その代りに何か消費者に認められる価値につながることをやろうと考えるだけで圧倒的な生産性の改善が図れるはずです。

 

 

 

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