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物事の本質をとらえる力

2014年4月2日 CATEGORY - 代表ブログ

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皆さん、こんにちは。

先週、また消費者をがっかりさせるような報道がありました。

空間除菌グッズの販売をめぐる根拠のない効果の広告への表示を取りやめるよう17社もの企業に対し命令されたというものです。

記事は こちら です。

この問題は、単純に企業を責めて終わりにするようなものではないと思っています。なぜなら、問題の本質が、企業だけでなく自分を含めた消費者側にも隠れているような気がするからです。

もちろん、第一義的に非難されるべきは企業だということは当然ですが、消費者自体も簡単に企業の売らんかなロジックに乗せられてしまうということを自ら問題視すべきではないでしょうか。この問題の本質は、物事について考えることを簡単に放棄してしまうことです。このことを克服しない限り、今回の空間除菌の問題に限らず今後も類似の問題が起こり続けると思います。

以下に今回の事案の問題の所在を整理してみます。

空間除菌の根拠となる成分は「二酸化塩素」という物質です。そして、これ自体には殺菌作用は認められているようです。では、なぜ問題とされるのかということになるのですが、効果のあるものを置いておくことと、実際に効果が出ること、またそれが継続することとは違うことということのようです。

実際に、かなり前から国民生活センターでは次のような消費者へのアドバイスがなされていました。

•二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品は、さまざまな状況が考えられる生活空間で、どの程度の除菌効果があるのかは現状では分からない。

•二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品は、二酸化塩素の放散がほとんど確認できないものがあった一方で使用開始当初に放散速度が大きくなるものもあり、使用に際しては注意が必要である。

このことを理解するために分かりやすい例を出すとすれば、このようなものではないでしょうか。

「インフルエンザの特効薬であるタミフルはウィルスに対して確実な効果があるということについては科学的根拠がある。しかし、その効果のあるタミフルを服用するのではなく、部屋の中に置いたり自らの体に身に着けることで、普段からインフルエンザに対する効果があるなどということを信じる人はいない。」

「空間除菌」のような理屈を、企業がいわゆる「権威」として提示してきたとき、すぐさま上記のようなロジックで対抗するということは実際には簡単なことではありません。しかし、少なくとも、単純に乗ってしまう前に消費者が自分自身で考えてそのロジックに対抗してみるという癖をつけることは重要だと、改めてこのニュースを見て思いました。

それからもう一つ、この問題以前の大前提にも疑いの目を向けるべきではないかという視点があります。

そもそも、なぜ空間を除菌する必要があるのかということです。

空間除菌をするということは、その空間を清潔に保つという一定の意味があります。しかし、それは「一定」にすぎません。私たちの生活環境がすべてその空間で完結すればよいのですが、そうもいきません。そして、その外ではありとあらゆる細菌やウィルスが存在しているのです。

そして、人間には免疫機能があります。これは、一度触れたことのある細菌やウィルスに関する情報を取り込んで次回以降それらが体内に入り込んだときに有効な方法で撃退するシステムです。いわゆる学習システムです。

空間除菌に限らず、必要以上に清潔さを追及することは、この学習をその「一定」の空間の中においてだけ放棄することだと思います。ただ、未就学の時期というのはこの閉鎖された「一定」の空間にいる状態が長く続きます。つまり、この学習を行わないということによって、無防備な状態を継続してしまうことになります。ですから、社会に出ていく段階において一気に大きなリスクを生じさせるということになるわけです。

このことが、アレルギーなどで苦しむ子供たちが一昔前に比べて格段に増加してきたことの原因の一つではないかと考えている研究者も少なくないようです。

このように、「権威」に対しても、自らの思考をまずは優先させるという癖をつけることがこれからの消費社会を適切に生き抜くためには必要不可欠なことだと思います。

そして、企業には、消費者がそもそも健全な「自分自身で考える力」を備えているということを前提として、当然のことながら消費者の何倍もの本質をとらえる力を磨くことが求められているのではないでしょうか。

このことは言うは易し行うは難しです。

ですが、私としては消費者側の人間として、そして企業側の人間としてもこのことを肝に銘じて精進していきたいと思います。