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知識と経験と直感のうち何が一番大切か

2014年7月9日 CATEGORY - 代表ブログ

unthink

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

世の中には簡単な話を難しくする人、難しい話を難しくする人、そして難しい話を簡単にする人の三種類がいて、一番目を無能、二番目を凡人、そして三番目を天才と呼ぶらしいですが、この「Unthink」の著者Erik Wahl氏は明らかに三番目だと思います。

著者は本書の冒頭で「創造力に恵まれた人は少数の選ばれた存在だと一般には信じられているが実際は誰もが持っているものだ」と断言しています。このことは、非常にセンセーショナルな発言ではありますが、それでも私は今まで著者以外の方の発言としても少なからず聞いたことがあります。

しかし、そのことをすっきりと納得する形で説明している方に今まであったことはありませんでした。それを著者は本書において実にすっきりとした形で説明していたのです。

この本の主題は以下のアルバート・アインシュタイン博士の自分がどうして相対性理論を発見することができたのかについて説明した言葉に集約されています。

「普通の大人は空間や時間の問題について立ち止まって考えたりしないからだ。そんなことをすれば子どもだとみなされてしまう。しかし、私の知的発育は遅れていた。その結果すでに大人になっているにもかかわらず、時間と空間のことしか思い巡らしてはいなかった。当然、大人だから、普通の能力を持つ子どもより問題に深く分け入ることができた。」

つまり、彼の才能は子どものままで大人の生活に入った結果花開いたということです。

この本の主題、それは「本来人間が生まれながらに持っているが、成長の過程で論理性(左脳の働き)を得ることトレードオフの形で失っていく創造性(右脳の働き)を、意図的に左脳と右脳を使い分けることによって、見事にコントロールしながら発揮することができること」をさまざまな角度から専門家の発言等を引用しながら説明することです。

「大発見」「大発明」等、「すばらしい仕事」を成し遂げるためには知識と経験と直感のうち何が一番大切かという質問に対してそのうちのどれかひとつをあげてもまったく説得力を持たないことに気がつきます。

子どもは「直感」だけを頼りにします。ですから、大体のことは空振りになりますが、時々大人が考えもよらなかった大ホームランが飛び出すことがあります。それに対して大人は、その「直感」を「子どもっぽさ」という言葉で否定し、「知識」と「経験」で乗り切ろうとします。ですから、大体のことは平凡な結果となります。

そのため、著者は子どもの思考=Unthinkに意識的に戻ることでこの奇跡をコントロールできると主張しています。

なるほどと思いました。ただ、これだけでしたら、そこまで説得力を持って迫ってこなかったと思います。本書がすばらしいと思ったことは、「知識」と「経験」の限界を「変数」という概念で以下のように説明していたことです。

「バタフライ効果は論理的予測という行為が空想であることの説明となっている。実際には世の中には予測不可能な『変数』があまりに多くあり、自信を持って結果を『知る』ことは実は不可能だと悟って行動するという子どもの姿勢が重要となる。ただし、計画したり知識を得ることを辞めろということではない。計画していないことやまだ分かっていない知識もおろそかにしてはいけないということを踏まえた上で計画し知識を得るべきだということだ。このように知識と経験と直感が合わさったとき『セレンディピティ』=奇跡が起こるのだ。」(一部加筆修正)

バタフライ効果というのは1960年代に気象学者のローレンツの論文にて取り上げられました。気象がより例ですが、環境にはあまりに多くの「変数」が関与していて「ブラジルの蝶の羽ばたきがテキサスでトルネードを引き起こす」ようなことにつながることを誰も予測することができないけれども可能性は否定できない、つまり、環境の変化を起こす要素としてありとあらゆる「変数」が考えられ、それぞれのほんのちょっとの変化だけで結果に大きな違いができくる場合があるということです。つまり、「知識」や「経験」で物事を予測することには大きな限界があるとする考え方です。

ですから、人間の知識や経験ではどうにも対処できない「変数」の複雑な組み合わせを、意識的に「直感」を「知識」と「経験」に組み合わせることによって「セレンディピティ」=奇跡を起こすことができると著者は考えています。

個人的には非常に納得の一冊でした。

 

 

 

 

 

 

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