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資本主義の終焉

2016年4月22日 CATEGORY - 代表ブログ

資本主義の終焉            

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

一年ほど前に、「資本主義の終焉と歴史の危機」というタイトルで、日本大学の水野和夫教授の講演を聞いたのですが、なかなか一時間そこそこの講演ではこの壮大なテーマの全体像がよく分からなかったというのが本音でしたので、いつか時間を作ってこの講演と同タイトルのご著書を読もうと思って「積読」していたのですが、この度ようやく読むことができました。

私は、このブログで「資本主義」の限界とその後にくるべき新しい考え方について触れている様々な書籍を取り上げながら、このテーマについて考えているのですが、水野教授はまさにそのドンピシャを攻めてらっしゃいます。

資本主義において、資本がスムーズに拡大していくことができる大前提が、安定的に安価で手に入る資源と労働力です。

そして、資本主義の歴史は、この二つを「資本」が探して歩いた歴史とも言えます。

まずは、その「資本」の身近で探し、そこで、それらに投資します。そして、それらの数には限りがありますので、次第に手に入りにくくなると、「資本」は次のターゲットを探して、陸を移動し、海を渡ります。 こうすることで再び「資本」は効率性を保つことができます。 これが、資本主義が常に「フロンティア」を求める理由です。

歴史的に言えば、ヨーロッパ諸国による植民地政策、そして戦後のアメリカを中心としたグローバル経済がまさにそれにあたります。

本書の主題である「資本主義の終焉」は、遂にこのフロンティアの終焉が地球的規模で訪れてしまいそうなところにまで来てしまったことによって起こっているという警鐘です。

また、経済システムである資本主義と政治システムである民主主義は、先進国の中だけで両立できた例外的ものでした。しかし、経済システムの資本主義が上記のように終焉を迎えると、それを前提として成り立っていた政治システムである民主主義の存続も危機に瀕することにもなりかねません。

ですから、今私たちに求められているのは、資本主義の次に来る新しい経済システムです。

しかし、著者は本書で 「資本主義の先にあるシステムを明確に描く力は今の私にはありません。」 と正直に告白しています。そして、今まで当ブログでもいろいろな書籍をご紹介していますが、それらの著者も、現時点で明確に描く力を持っているとは言えないと思います。

ただ、水野教授は、上記のような告白をしながらも、次のようなヒントを本書で提供してくれています。

「暴走する資本主義にできる限りブレーキをかけて延命させることで、次にくるべきシステムに備える準備を整える時間を確保するということです。」

これは、とりあえずは「ゼロ成長社会」を肯定すべしということです。

もっと具体的に以下のような説明をされています。

「家計でいえば、自動車一台の状態から増やすことなく、乗りつぶした(企業の場合では、減価償却が終わった)時点でのみ買い替えることを繰り返す経済をよしとする社会」

今の資本主義の考え方からすると、「変人」の考え方になりますが、まさに新しいシステムの方向性とはそういうものでしょう。

そして、こんな考え方ができるような社会では、もはや人口減少も、それほど恐ろしいものではなくなるのではないでしょうか。    

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