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300年組織のつくり方

2017年9月6日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ソフトバンクの孫正義社長関連の新刊「孫正義300年王国への野望」を読みました。

いままで、このブログでも何冊も孫社長に関連した書籍を紹介してきましたが、孫社長自らが著者として書かれたものはありません。

孫社長のすごいところは、ビジネス以外に一切手を出さないことです。

少なからず事業に成功した経営者は、書籍の執筆、講演活動、政治活動等を行うことがあります。

これは、本人の意思というよりは、出版社や政党などによって強力に説得されてしまうことが多いようですが、孫社長はそれらに一切流されない強い意志をもって経営に徹しているということだと思います。

孫社長の経営がそのような強い意志をもって行われることは、まさに本書のタイトルでもある「300年王国への野望」を明確にもっていることによって証明されています。

本書も当然、孫社長自らが書かれたものではありません。

しかし、本書では、今まで読んだ孫社長関連の書籍の中で最も、そして圧倒的に「臨場感」を感じることができるほど、孫社長の様々な決断の裏側にあるストーリーが生々しく描かれていました。

そんな本書で、私が一番印象に残ったのは、企業経営者の信念とそれを実現するために必要な企業のオーナーシップの関係です。

資本主義社会における会社のオーナーは紛れもなく株主です。

ですが、上場企業であれば、そのオーナーシップはこま切れとなり、その意志も細切れのものとなります。

通常、企業の経営者は自らの方針について株式市場とコミュニケーションをとり、納得を得ながら実現していくことになります。

これには、経営者の職務の執行を監督し、放漫経営を未然に防ぐという効果があることは確かです。

しかし、孫社長の経営の目的は「産業革命」をもしのぐ人類史上最も大きなインパクトを持つ「情報革命」を起こすことです。

彼のように大きな目的の実現のためには、一つ一つの決断に関して、細切れの所有者たる株主の説得に時間をかけることが致命的な問題になります。

しかも、その決断が世の中を左右するような大きなものであればあるほどです。

その問題を解消するためには、オーナーシップの集中が最も重要になります。

そのことを生々しく表現している孫社長と彼が買収しようとするアーム社のCEOとのやり取りをご紹介します。

孫社長「それだけIOTの重要性を認識しているなら、もっとガンガン投資して今こそ攻めるべきだ。」

相手「それはそうさ、でも我々は上場企業だ。なかなか市場には理解してもらえない。我々も投資していくということは何度も説明している。でも、それが原因で利益率が少しでも落ちたら株価は下がるとなかなか理解してもらえない。」

孫社長(市場に理解されないならば、ソフトバンクがよき理解者となればいい。彼らが飲みやすい条件とは何かを考えれば、同意は取り付けられそうだ。やるなら今だ!)

この後、3兆円超という空前の買収ディールが成立します。

これを外から見ると、アームという半導体設計専業企業は、現在のソフトバンクの既存事業とはほとんど関係ない、すなわち、現時点において相乗効果はほとんど見込めない企業の巨額による買収です。

ですが、孫社長に言わせると50手先の読みによるもので、「3兆円でも安い」というわけですが、これは普通のサラリーマン社長が決してできることではありません。

また、その50手先の判断のための「オーナーシップの集中」を実現するためには、金銭に対する特別な感覚が必要となります。

孫社長のこの特別な感覚については以下の言葉が参考になります。

「ネットバブルのころ、個人資産が一週間で1兆円ずつ増える経験をして、お金などつまらないと思ったね。それによって、人生の価値って何なんだと深刻に考えるようになったんだ。俺が事業家としてやるべきことは何なんだと。こうなったら、つぶれてもいい、つぶれても本望だと。その結果、日本のインターネットが立ち上がるなら僕の人生をささげてもいいって本当に純粋な気持ちで思えたんだ。」

こんな人に、私たちの国家の運営を任せられたらどんな素晴らしい未来が待っているのだろうかと一瞬思わざるを得ませんでした。

でもその情熱は、オーナーシップと裏表の関係でしかありえないというのもまた事実でしょう。

江戸幕府が250年続き、孫社長が300年企業を目指せるのには、この「オーナーシップの集中」抜きには考えられないことだと思います。

そうなると、私たちの国家をすこしでもまともなものにするためには、主権者たる私たちが細切れのオーナシップであったとしても、それをしっかり意識し、政治を託す人間を自ら選択する姿勢を集合させる以外にはないのかも知れません。

 

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