おすすめ書籍紹介

世界の英語を歩く #54

2014年6月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

世界の英語を歩く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】 世界の英語を歩く

【著者】  本名信行

【出版社】 集英社新書

【価格】  ¥476 + 税

【購入】    こちら

 いままで国際共通語としての英語を考える書籍の紹介をいくつかしてきましたが、この本ほど鋭くその本質に迫ったものはないのではないかと思えるくらいに深く切り込んだ内容となっていました。

物事の普及と変容の関係を主題として、英語が国際共通語として普及するにはその代償として各地域における変容が不可避であるということをいろいろな地域における英語の例を出しながら解説されています。

しかも、昨今の英語の世界的普及は英語の母語話者の人口増大によるものではなく、英語以外の言語を母語として仕事や交流で幅広く運用する人が増えたことによるものだという前提を明らかにした上で、英語の国際共通語としての地位を認めるということは、英語の多様性を尊重しながら英語によるコミュニケーションを有効に進める方法を考え出さなければならないということです。

これは、ノンネイティブだけではなくネイティブもともに考えなければならないことだということです。つまり、国際共通語としての英語のイニシアティブは私たち日本人のようなノンネイティブが握っているという認識を新たにすべきだという指摘が非常に印象的でした。

特に印象的だったマレーシアの例をご紹介します。

1971年に公刊されたマレーシアの「英語教育指導要領」のなかでは以下のような記述があるそうです。

「マレーシア国内での教育環境でイギリス英語の話し手を養成することは極めて困難であり、またその必要性もない。そのためネイティブ志向は適切ではないと判断する。」

そして、1975年の改定時のその指導要領の方針に対するある専門家の意見として以下のようなものが記録されています。

「コミュニケーションに目的を定めると近い将来単純化された英語(マレーシア英語)が発生することになるでしょう。マレーシアの教育政策ではこのような英語は実利的言語と認識され、使用を目的とした道具としては十分であり、『鑑賞の対象』ではありません」

マレーシアやフィリピンをはじめとする道具としての英語の活用が実現できている国の英語に対する目線は、総じて「オレ様目線」です。「マレーシア英語」「フィリピン英語」のように「〇〇英語」という語感に肯定感(誇り)を持っていると言い換えることもできると思います。

翻って、「日本語英語」。この言葉の響きに肯定感を日本人が持てるかどうか。いつまでもネイティブ英語を『鑑賞の対象』にしてしまう日本人にとっては、このことが日本における「道具としての英語の活用」を実現できることと同意義だと強く感じさせられる一冊でした。