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英語教育村の真実 #52

2014年6月5日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

英語村の真実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】 英語村の真実

【著者】  佐藤誠司

【出版社】 南雲堂

【価格】  ¥860 + 税

【購入】    こちら

私はよく「日本の六年間にわたる英語教育は無駄であるけど無駄ではない」という表現を使います。

六年間もの間、「語彙」「文法」などの知識を詰め込むだけの受験勉強だけでは英語が使えるようにはならない。つまり、その意味では、「無駄である」が、それらの知識は使えなくとも脳内に存在しているため、ランゲッジ・ヴィレッジのような「知識を使う環境」に二週間程度浸かるだけで英語が使えるようになるのだから「無駄ではない」という意味です。

この本は、この六年間にわたる「語彙」「文法」などの知識を詰め込むだけの受験勉強が、「無駄」に終わってしまう原因について、英語教育村の仕組みの4種類の構成要素のそれぞれの罪を検証するというものです。

4種類の構成要素とは、「文部科学省」「英語入試問題」「英語教師」「英語出版物」です。

それぞれに、「へ~」と思わせられる部分がありましたが、一番印象に残ったものをご紹介したいと思います。

それは「英語入試問題」の罪について。

著者は1960年代を境にこの罪が急速に大きくなっていったと指摘しています。その原因は、高卒人口が急速に増加し、同時に大学入試の受験者数が爆発的に増えたことを受けて、従来のような手作業での採点が不可能となり、選択式に改める必要が出てきたことです。

試験形式が選択式となれば、論理を汲んだ良問を出せば、優秀な人であれば満点を簡単に取れてしまい、合格者を絞ることができない。そうなると自然に「奇問」を多用することで落とすための試験を行うしかなくなります。「奇問」ですから、重箱の隅をつつくような問題ばかりとなり、普通の社会では「役に立たない」受験のための受験問題の仕組みが出来上がってしまったというわけです。

著者は以下の実例を出してそれを指摘しています。

(ケース1)以下の[]の中を正しく入れ替えなさい。(その際、二番目に来る番号 は何か)

He is the [①person/②to/③of/④speak/⑤last/⑥ill] others.

答えは、He is the last person to speak ill of others. ですから、①です。この問題では、[the last ○○ to ~]で「決して~しない○○」というルールを覚えているかどうかですべてが決まります。

それに対して、

(ケース2)以下の日本語を英語にしなさい。

「彼は決して人の悪口を言うような人ではない。」

答えとしては、[He never says bad things about others.]とするのが自然でしょう。ケース1と2の英文を比べると、圧倒的に2のほうが基本的です。しかし、あの日本語文をこのような「基本的」な英語に直せる力のほうが「充実」した力だと思います。

この力を「英語を使う力」というのだと思います。文法を文字通り文を作る法(ルール)ととらえ、与えられた日本語を自在に英語に直す力、もっと言えば、自らが伝えたいと望む内容を英語にする力を測ることを目的とした受験問題の仕組みに変えるべきということになります。

極論かもしれませんが、日本の受験問題をすべてこのような良問の「英作文」にしてしまうだけで、「英語を使う力」の育成につなげることができると思います。

しかし、実際にはそれは不可能です。

それは、先述した大量の受験者をさばけないという量の問題ももちろんあります。しかし、量だけでなく、このような問題を採点する採点者の能力がそのような前提で作られていないという質の問題も絡んできます。受験者の数だけある解答を、的確に採点する力は当然のことながら、採点者にも圧倒的な「英語を使う力」が備わっていなければならないわけです。

このことは「英語教師」「英語出版物」の罪にもつながっていきます。著者はその解決方法として、「英語で飯を食っていくことを決めたのならば、自己研鑽にはげむのは当たり前」と当たり前のことですが、手厳しい。

兎にも角にも、この本を読むことで、英語教育村の真実は人口問題のような構造的な問題も絡む非常にやっかいなものであるという認識を新たにしました。