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「英語が使える日本人」は育つのか? #85

2014年11月9日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

英語

 

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】 「英語が使える日本人」は育つのか?

【著者】  山田雄一郎 大津由紀雄 齋藤兆史

【出版社】 岩波ブックレット

【価格】  ¥480 + 税

【購入】    こちら

私が心から尊敬する日本人と英語について根本から考え提言をする優れた言語学者が座談会方式に発言されているのをブックレット化したものです。(鳥飼先生が今回は不在ですが、その代わりに先日ご紹介した「英語教育はなぜ間違うのか」の著者、山田雄一郎が議論に参加されています。)

本座談会は、「英語が使える日本人」をそもそも義務教育において育てることを目標とすべきかどうか、この根本的なところから議論をスタートさせています。

もちろん、彼らの議論の結論は、コミュニケーションの基礎は日本語、英語、その他の言語に関わらず「基底能力」とよばれる水面下に埋もれる氷山の大きい部分に相当するものであり、この部分の深化をないがしろにして水面より顔を出している表出部分のみを平易な会話表現などを覚えることで何とかしようとするような教育をその目標とするなど言語道断だというものです。

すなわち、義務教育は国民がいつの日か自らの才能と可能性を発揮するための土台作りの場であり、その意味からも正しい基礎教育に徹するべきだということです。

義務教育だからこそ、小手先の便利さ(実際は便利でもないですが)に目を奪われることなく、しっかりした言語哲学に基づく英語教育政策を腐ることなく訴え続ける彼らの存在を非常に貴重なものだと思いますし心から応援をしたいと思います。

最後に斎藤教授のバイリンガル教育に対する考えを引用します。

「主要先進国と言われる国の言語状況を考えてみると、それぞれ単一の強力な言語を有していることが分かります。政治・経済・文化において繊細な議論ができるのです。母語話者としての完璧な言語能力を100としましょう。そして、日本語教育を犠牲にして英語教育を強化し、二言語併用教育が奇跡的にうまくいって日本人が英語80、日本語90くらいのバイリンガルになったとします。それでも、英語の母語話者には英語の運用で負け、母語による思考の精度で負けます。母語話者との英語による対話の不平等がかろうじて緩和されるのは、こちらが相手に分からない言語(日本語)を100の力で保持している場合だけなのです。」

この考えを基礎として、「英語が使える日本人」を育てるとしたら、その方法は義務教育の本文を全うした上に何を載せるかを考えることであって、義務教育の中身を小手先のものに影響させることなど決してあってはいけません。

 

文責:代表 秋山昌広

 

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