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英語学習 7つの誤解 #25

2014年5月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

7つの誤解

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】 英語学習 7つの誤解

【著者】  大津 由紀雄

【出版社】 生活人新書

【価格】  ¥735(税込み)

【購入】   こちら

 

この本で著者は、以下の7つの考えはすべて誤解だといっています。

誤解1 「英語学習に文法は不要である」

誤解2 「英語学習は早く始めるとよい」

誤解3 「留学すれば確実に身につく」

誤解4 「英語学習は母語を身に着けるのと同じ手順で進めるべき」

誤解 5 「英語はネイティブから習うのが効果的である」

誤解 6 「英語は外国語の中でも特に習得しやすい言語である」

誤解 7 「英語学習には理想的な、万人に通用する科学的な方法がある」

これらは、世の中でまことしやかに「定説」のように言われています。しかし、著者はこれらをすべて「誤解」であると言い切っています。そして、私が信頼性が高いと思っている英語教育学者のほとんどが、著者と同じ立場です。

私としては、前回までの記事にも書きましたが、これらのほとんどについて理屈としては著者に同意できます。

これらの考え方はすなわち、文科省の方針が「絶対にダメな理由」そのものです。しかし、世の中の多くの人々はその「理屈」を決して認めません。

経済界、そして親たち、つまりこの件に関する利害関係者の多くは、「理屈」ではなく「実績」をもとめ、今回のような改革を文科省に迫ったのだと思います。

今回この記事を書こうとしていろいろ調べていましたら偶然以下の動画を発見しました。

この方のプロフィールは こちら

スティーブさんの冒頭の言葉は以下のようなものでした。

「私はこの本を読んだことがないんですけど、タイトルが面白かったので、この7つの誤解について自分の意見を述べたいと思います。」

このビデオをここに紹介した理由として、この姿勢こそが日本の英語教育を混迷させるひとつの大きな元凶だと思ったことがまずひとつ挙げられます。

しかも、この方のプロフィールを見ると独学で様々な言語を習得されている、そしてこの動画でもわかるように自ら日本語を非常に上手に操っている。

このような方が、このプロフィールで明らかにされるような「実績」をもって発言することで、「やっぱりそうだったんだ」「英語の専門家の言うことを信じても英語ができるようにならないけど、素人の実績のほうが実際にものを言うんだ」という考えを作り上げてしまうのだと感じました。

どんなに自分自身の「実績」に自信を持っていても、批判する対象の内容を読みもせずに公に物事を批判するという態度は、実際にその内容がいかなるものであろうと、あってはならないと思います。

まさに、現在の英語教育に対する批判が、中学高校と日本の英語教育を受けた経験のあるすべての日本人一人一人が自らの体験のみをベースに「日本の英語教育はダメだ」と言っているのと同じことです。

「今の日本の英語教育はダメだ」ということに対して「だから単純に今と違う英語教育をすればいいんだ」という対処でいいはずがありません。なぜなら、しっかりとした理屈に立たない「今と違う英語教育」はそれもまた失敗する運命にある可能性は非常に高いからです。

ただ、私は英語教育の実践家としてこのビデオの中のスティーブさんの意見がすべて間違っているとは思っていません。

この点が、このビデオを紹介したもうひとつの理由です。

このビデオの中でスティーブさんは「文法」の部分について、「文法は直接的に学習するべきものではなく、間接的、すなわち言葉を使う中で、小さな簡単な文法書で確認するように学習するべき」と言っています。

私は、「今の日本の英語教育はダメ」な理由をしっかりととらえて、その理屈の上に、「新しい英語教育」を作り上げることが何よりも重要で、唯一の方法だと考えています。

まさに、このことは私が考える「その理屈の上に、「新しい英語教育」を作り上げる方法」の具体策そのものだと思います。

「理屈」はなによりも大事です。ですが、その理屈を作り上げてきた英語教育の専門家も、「実践」を軽視してきたことによって、「実績」を作ることができなかったという事実をないがしろにすることは許されません。

つまり、専門家はその理論を現実の世の中との要請とのすりあわせをする努力をし続けるべきだということです。そして、その中で本質を外れないように素人をきちっと本来あるべき方向へ導くべきだと思います。

もう、行政として進む方向性が決まってしまったのですが、英語教育の専門家の先生にはどうか、この「理論」と「実践」のつなぎの研究に真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 

文責:代表 秋山昌広