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英語教育熱 加熱心理を常識で冷ます #24

2014年5月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

英語教育熱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】 英語教育熱 加熱心理を常識で冷ます

【著者】  金谷 憲

【出版社】 研究社

【価格】  ¥1470(税込み)

【購入】   こちら

 

日本では英語教育においてはなぜか、「常識的」な思考が政策に反映されないことが多いのです。その理由が何なのか?これに応えてくれるような本はないかと探していて見つけた本です。

この本の中で紹介されている英語教育においてまことしやかに信じられている事柄のうち最も著者が常識から考えておかしいと思っている(と思われる)ことは、

「六年やっても使えない」 という考え方です。

ここで、「六年ではないでしょう」というのが著者の主張です。著者の計算では、日本人が中学高校で英語に費やす時間の平均は1000時間程度です。

これは、日数に直すと 1000÷24=42日 睡眠時間も入れれば、1000÷12=84日 つまり、三か月程度にすぎないということです。パーセンテージでは4%(本の中では2.4%)程度しか費やしていないのです。

このことをとらえて、著者は「そもそもこれで話せるようになることを期待することのほうがおかしい」とおっしゃっています。

そして、このくらいしか費やしていないのに英語での自己紹介をするように振られたときに、「何とか自分の出身や趣味などについてくらいは説明できる」ことが達成できている今の状況ば、費用対効果的にはむしろかなりいい線なのではないかと言う指摘もされています。

また、さらに高校球児が甲子園を目指すうえでの練習に費やす時間と労力をあげ、普通の体育の時間で野球を習ったひとが体育で習ったのに「甲子園」に出場できないのは学校の体育の授業が駄目だからだということを聞いたことがないという「常識」を提示されています。

それなのに、英語に限ってはこのような責めを英語教師は負わされているといわれています。この点で見ても英語教育においては常識が常識として扱われなくなってしまっているというのです。

このような常識が英語教育となると機能しなくなってしまう理由について、著者は以下のように考えられているようです。

①熱中・・・・・・・・・教育熱、自分が苦しんだ分、子供には・・・ ②あがり・・・・・・・・外国人に弱い ③あこがれ・・・・・・・欧米志向 ④「空気」・ムード・・・流行

これらについて、一つずつ説明をされているのですが、私としてはどれもちょっと説得力に欠けるのかなといった感じがしました。もう少し、具体的で決定的な理由を説明されているのかなと期待値を高めすぎたということもあったとは思います。

それよりも、今回この本を読んで強く思ったことがあります。

この著者をはじめ、しっかりと英語教育に向き合い、本来の「常識」を踏まえて議論されている学者さんは少なくないのですが、しかし私のような「実践」を商売にしているような人間からするとやはりどうしても「いいわけ」めいたように聞こえてしまうことです。

その点こそが、経済界や世の中の親御さんが「非常識」なことに目を奪われてしまう隙を与えることにつながっているのではないでしょうか。

つまり、「でも、なんだかんだ言って結局ダメじゃん!」というわけです。

また、私は先述した、著者の「甲子園と体育の授業」の件について特にがっかりさせられました。

もちろん、著者の言う通り日本の英語に割り振る時間に関しては、現在のその必要性からいえば少なすぎだとは思います。

しかし、六年間、もとい「1000時間」かけての結果として「自己紹介」ができることで満足するべきだなどということはあり得ないと思います。

それであれば、初めから英語は選択制にすべきだし、現在の日本人にとっての中国語のように必要になった人が必要な時に自らの費用で習得すればよいのです。税金を費やして、強制的に教えるのに、このことしか実現できないことをそもそもの目標とすべきというのは、英語教育界にいるものとして非常に無責任だと思います。

「日本は日本の今までの積み上げてきた実績を無駄にせず、中学生以上の「分析的能力」という武器を最大限に活かした上で、「使う環境」を少しでいいから上乗せする方法を確立すべき」と私は考えます。

これを行えば、時間数なども変えることなく、甲子園までは行けなくても、すべての生徒が「野球の上手下手はあっても草野球を楽しむことができる」ことを実現することができると考えています。

私の仕事は、「『使う環境』を上乗せする」ことです。ですから、その実践をこれからも地道に進めていきます。

 

文責:代表 秋山昌広

 

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