おすすめ書籍紹介

英語辞典を使いこなす #62

2014年7月7日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

【書籍名】 英語辞典を使いこなす

【著者】  笠島準一

【出版社】 講談社学術文庫

【価格】  ¥950 + 税

【購入】    こちら

本書のような内容の「英語辞書の使い方」を学校教育の英語で時間をとって学べる機会があったなら、日本の学生の英語学習体験が良い方向に向かうのは間違いないと思われます。

それほど、本書は良書です。

この手の本では「英和辞典」や「和英辞典」の使用ではなく、「英英辞典」の使用を無条件に推奨するというケースが多いのですが、本書では決して前者を否定しません。むしろ、その使用で問題が解決するのであれば、英英辞典よりも圧倒的に時間を省略できる点を明確にしています。

その中で「英和・和英」と「英英」の使用について合理的な使い分け、もしくは重複活用の方法を紹介しています。

まず、「英和・和英」の使用において、もし一つの辞書を調べてもしっくりしない場合は他の辞書を引いてみることを勧めています。それでも、しっくりとこないことがあることは英語学習者であれば少なからず経験があると思います。これは以前、「ことばと思考」というブログ記事の中で明らかにしましたが、言語が違えば、語彙によって切り取る概念の範囲は各言語ごとに違いが生じることに原因があります。

ですから、英和辞典で調べるということが、英語という言語で切り取られた概念範囲を、日本語という言語の概念範囲に押し込めようとすることである以上、完全には「しっくりこない」状態を排除することは不可能ということになります。

その場合に、「英英辞典」の登場です。英語の語彙を英語で説明するわけですから、当然にして語彙の概念範囲を的確にとらえることができます。しかし、このことがなかなか我々日本人にとってはこれまた「しっくりこない」ことが多いのも事実です。

それは、日本人の思考の基礎が日本語で形成されているからです。したがって、「英英辞典」で確定した英語での概念範囲の上に改めて「英和辞典」による日本語での概念区分をかぶせることで、ようやく日本人の英語学習者の腹にストンと落とすことができるというわけです。

以上を踏まえて、著者の提案する日本人にとって最も効率的、効果的な「英語辞典の使い方」を一言で表現すると、

「英英は英和でピンとこないときに引け」

ということになります。

この感覚を日本の学校教育の中でなんとか身に着けさせる方法はないかと真剣に思います。これが実現できれば、英語教育は一外国語学習にとどまることなく、「言語の本質」をつかませる教育にまで昇華することができると思うからです。

 

文責:代表 秋山昌広

 

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