日本人と英語

日本人はなぜバッグをバックと呼ぶのか

2026年4月19日 CATEGORY - 日本人と英語

前々回の「子音の分類」、前回の「なぜthatはthisより発音が難しいのか」の記事同様、今回も英語関連書籍ではない慶應大学の川原教授の「『あ』は「『い』より大きい!?」からテーマをいただいて記事を書きます。

今回のテーマは「日本人がバッグをバックと呼ぶ理由」です。

上記の写真に写っている代物はそこに印字されているように「bag」であり、日本語では「バッグ」と呼ぶのが当然でしょう。

しかし、毎日「バッグ」を肩から下げていながら、それを当たり前のように「バック」と呼ぶ日本人のなんと多いことでしょう(チコちゃんに叱られる!風)。

同じように、「bed」を「ベット」、「dog」を「ドック」というバージョンもあります。(特に、ドックについては人間ドックのドックと混乱している人もかなりいるような気がします。ちなみに人間ドックのドックは船を検査したり修理したりする施設のdock)

私はこれらを聞くとすごく気になってしまい、特に年配のおば様たち(LVのスタッフの皆さん)が結構な確率で言われるのでいちいち「またか!」と思ってしまうのです。

私はこの件に関して、それらの発音をする人たちが間違っているだけで、私のこの「気になってしょうがない」現象はいたって正当な反応だと思ってきましたが、本書を読んで正当性は必ずしも私の側にあるのではないかもしれないことに気づかされました。

そのカギのなるのが「もともとの日本語には一つの単語に二つの濁音は存在しない」という事実です。

以下に本書の該当部分より要約引用の上、説明します。

濁音は声帯を振動させなければいけない一方で口腔は閉じているため口腔気圧はどんどん上がってしまい発音しようとすると、せっせと口腔を広げて口腔内気圧を調整してあげないといけなくなるという意味で、実に発音するのが『面倒くさい』音なのです。

そのため、ハワイ語やエストニア語、マオリ語、日本のアイヌ語などのようにこの面倒くさい濁音が存在しない言語がありますが、実はわが日本語も濁音は使われないわけではありませんが、明らかに使われにくい言語に分類されます。

実際、中国から漢語が入ってくる前の古い日本語(和語)には濁音を二つ含む単語がほとんど存在していません。また、日本語では一つの単語の中に濁音が二つはいることを嫌うという以下のような証拠があります。

日本語では単語と単語をくっつけて複合語にする時、二番目の単語の語頭が濁音になることがありますがこれを「連濁」と言います。

「みつ」+「はち」=「みつばち」

「ほし」+「そら」=「ほしぞら」

しかし、二番目の単語にすでに濁音が含まれている場合には、連濁は起きないのです。

「天ぷら」+「そば」=「天ぷらぞば」×

「たから」+「くじ」=「たからぐじ」×

「そば」や「くじ」などのもともと濁音が入っている単語が連濁を起こすと、単語内に濁音が二回出て来てしまうわけですが、それだと私たち日本人はとても「面倒くさい」と感じて避けてしまうということなのです(これを発見したのは明治政府のお雇い外国人のベンジャミン・ライマンという人で「ライマンの法則」と呼ばれている)。

しかし、現在の日本語には濁音が二つ入っている外来の単語が存在しているので、日本語でもそれを発音する「必要がある」ということになります。

ところが、日本人はずっと面倒くさくて避けてきたのでトレーニングができておらず濁音がどうしても一つになってしまうケースが多く確認されるというのです。

これが、まさに「bag」を「バック」、「bed」を「ベット」、「dog」を「ドック」の事例です。

ここで私は大いに反省しました。

私が主宰する「文法講座」における「発音」の位置づけに関するポリシーは、「私たち日本人ができるものとできないものを明確に区別し、できないものは早々に諦め、できるものだけを確実にできるようにすることで効率性と効果性を高める。その上で英語圏の人間に誤解される恐れがないレベルに達したのであればそれを是とする(それ以上のトレーニングは時間の無駄で、他のトレーニングに時間を使うべきだから)」というものです。

それはこのポリシーに照らせば、LVのスタッフの皆さんが「bag」を「バック」と呼ぶことに対して指摘などしたら、それは完全に「大きなお世話」で、自分で自分のポリシーに違反したことになることをここではっきりと認識してしまったからです。

ということは、チコちゃんに叱られるのはむしろ私の方だったということになるかもしれません。(笑)

 

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