
なぜどれだけ英語を学んでも洋画を理解できないのか
2025年7月3日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログでご紹介した「英語の雑談力が上がるちょっとしたフレーズ#350」よりテーマをいただいて書きたいと思いますが、第一回目のテーマは「洋画の難しさ」です。
私は、今の今まで初見の映画を字幕なしで「理解できた」という経験が一度もありません。
それはアメリカ留学中の英語だけで生活することが当たり前になっていた時期を含めてもです。
ですので、LVのウェブサイトにある「映画活用専門英語学習法」というページにおいても、
「私たちは『使える英語』を身に着ける方法として映画を教材に用いることをあまり推奨していません。むしろ、多くの人が抱く『洋画を字幕なしで見たい』という素直な欲求を英語学習の目標にすることは、目標設定の観点から好ましくないと思っています。なぜなら、不可能なことを目標に定めるとその時点で目標に到達できないことが確実に決まってしまうからです。英語を外国語として活用するというレベルにおいては、『洋画を字幕なしで見る(理解する)』ことはほぼ不可能に近いほど高度なことです。」
というように、ほぼ「諦めの境地」を正直に告白しながら、
「ただし、ビジネスや学問といってもそれぞれの分野における専門用語はあればあっただけ、よりスムーズなコミュニケーションを実現できることも事実です。」
として、その活用を「専門英語」の学習目的に限定して提案しています。
本書には、カナダ社会に長らく根を張って生活をされているモーゲンスタン陽子氏が、「言語」と「文化」という分け切ることができない二つの要素の狭間で苦しみながら、「社会に関わる」ことが語学学習にどれほど大切なのかを訴えられてる部分があります。
以下にその部分を引用し、私の冒頭「諦めの境地」の言い訳としつつも、その中で著者が見つけた「文化」にどっぷりと浸かった「言語」をいくつかご紹介しつつ、その「おもしろさ」に触れてみたいと思います。
まずはなぜ「ネイティブの使う言葉」が難しいのかがよく分かる部分。
「当たり前のことですが、英語圏のひとったちは同じような商品を使い、食べ物を食べ、テレビ番組や映画を観ています。ですからやはりそれらの文化に馴染んでおかないと、そこから生まれてくる名称、表現などを理解することはできないと思うのです。例えば、『シャーピー』という商標のアメリカの油性マーカーがありますが、今では油性マーカーの代名詞のように扱われています。このようなことは、『クリネックス』『バンドエイド』などが良い例です。このシャーピーは映画にもよく登場します。コメディー映画『インターンシップ』では、主人公が、ホワイトボード用の拭き消せるマーカーと勘違いしてグーグル社のガラスに思いっきり落書きをしていると、同僚が『それ、シャーピーだぜ』とツッコミを入れるシーンがあります。ここでもし、この単語を知らなかったら、聞き取りはおろか、そのツッコミの意味をつかむことはできません。」
まさに、これが「どれだけ英語を学んでも洋画を理解できない」理由です。
常にその社会でその文化の変化にもキャッチアップしていなければ、会話の様々な場面で、「?」「?」「?」となってしまって、流れを取るどころではなくなってしまいます。
しかも、単語の単位だけでなく、それぞれの単語は全てわかっていたとしても、ツッコミの背景にある社会的状況などを共有していなければ、それは容赦なく起こってくるわけです。
それは日本語だって同じです。私たちは平気で「マジックで書いてください。」と言いますが、日本語がかなりできる外国人であったとしても、「魔法」で書くってどういう意味?と思ってしまうでしょう。*「マジックインキ」は寺西化学工業の登録商標です。)
ですので、私はアメリカの映画館で上映中、映画の中で突如として繰り出されるジョークにちょっとだけ遅れて笑う非英語圏の人(日本人に特に多い)を信用しないことにしていました。(笑)
皆さん、いつになっても洋画が字幕なしで理解できなくても、決して自分を責めず、安心してコツコツ実力を積み上げる努力を続けていってください。