アメリカの強みと弱み
2016年2月10日 CATEGORY - 日本人と英語
今回も引き続き「サムライと英語」について書きたいと思います。
本書の中で著者の明石氏は、自分のアメリカ留学の体験を基に、アメリカという国への感動を次のように表しています。
「アメリカについては大学でみっちり勉強していたつもりだったが、本物のアメリカを見てやはり驚いた。圧倒されるというよりも、感銘を受けた。(中略)特に、アメリカの富、繁栄だけでなく、外国人や留学生を受け入れる懐の広さに感心した。アメリカ人は気前よく外国人を迎え入れる。一介の若造の留学生として、それには感動した。このアメリカ留学の体験を通じて、私は感じた。日本は何という国と戦争をしていたのだろう、我々は全く勝ち目のない、絶望的な挑戦をしていたのだ。こんなすごい国と戦っていたとはなんと愚かだったのだろう、と。」
私自身も、自分のアメリカ留学体験にてその感動を味わいました。
著者が言うように、大学における留学生を受け入れる懐の広さも然りですが、図書館、美術館、博物館といった文化芸術に関する施設の規模とそれを惜しげもなく、自国民だけでなく外国人に対しても平然と無料、もしくは非常に低料金で公開するということに感動しました。
このことは、優秀な人材を世界からアメリカに呼び寄せるうえで圧倒的な強みになっていることは間違いありません。
ただ、私は一方で、別の視点からのアメリカの姿についても強烈に感じました。
それは、アメリカが自らの懐に外国人を惜しげもなく包み込むことはできても、「自分自身を相手に合わせることを極端に嫌う」という性格を有しているということです。
まず、アメリカ人は一般に外国語を学ぶということに、他国民と比べて価値を感じていないように思います。また、それと同じような感覚だと思うのですが、一般に「(変動)外国為替」という概念を理解していない人が少なくありません。
私の下宿所のホストマザーは、心理学の博士号を持ったいわゆる知識人でしたが、私が食事中に言った「今日はドルが急に高くなったね」という発言に対して、「?ドルが高くなるってどういう意味?」と真面目に質問をしてきました。
ドルが、対外国通貨で値段が上下するという概念が存在していないということのようでした。ホストマザーの中では、ドルは基軸通貨であり、ドルの価値が変わる、そしてそれが毎日他の国の通貨との間で変動し続けるということなど考えもしないということでした。
日本では外国為替については、毎日のニュースの中で対ドルいくらというように普通に自国の通貨の強さ弱さを対ドルで伝えています。ですから、海外旅行をしたことがない方でも、その概念は普通に持っています。
確かによく考えてみると、日本では数ある外国通貨の中で対米ドル(現在では対ユーロも)のみ特別に表示されます。逆にアメリカにおいては、日本が米ドルを意識するような形で、他の国の通貨を意識することはないだろうなとは思います。
このことから分かることは、アメリカという国は、圧倒的に「自分以外の国に対する関心が少ない」ということだと思います。 自分のことを尊敬するものに対しては自らの懐にいくらでも受け入れるが、自分自身が他の国の懐に入ることなど考えもしない。
このこと自体は、今までアメリカが世界中で最も経済的に成功した結果であり、否定するようなことではないのかもしれません。しかし、他の国に対して関心を持たないということは、その延長線上に、他の国に対して、自国の考え方を押し付けるという姿勢につながります。
私は、この姿勢こそが「アメリカの弱み」に直結するのだと思います。
現実にその影響は、昨今の一部の過激なイスラム勢力による世界的なテロ事件などにも見られます。
日本人は、逆に自らの文化を必要以上に蔑みがちなところがありますが、逆を返せば、他の国の文化のいいところをいつでも取り入れる柔軟性を持っているともいえるかと思います。 「アメリカの弱み」を解消するにはまさにこの日本人の持つ「柔軟性」が必要だと思います。