発音記号にみるアメリカ英語とイギリス英語の違い
2022年9月25日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語「発音記号」の鬼50講」からテーマをいただいて書いていきたいと思います。
紹介ブログの記事の中で書いたように、私は自ら主宰する「文法講座」における「発音記号講座」を「ほぼ完璧」な内容とするために厳密性をあえて省略しているのですが、中には旺盛な好奇心によって知りたいという欲望を抑えられない方もいらっしゃり、その方々の気持ちも十分に分かります。
そこでこのシリーズで取り上げるテーマとしては、そのような方々の欲望に応えるためにあえて私が省略した部分にスポットを当てるものとしてみたいと思います。
第一回目のテーマは「アメリカ英語とイギリス英語の違い」についてです。
私は英語学習においてこの「アメリカ英語とイギリス英語の違い」を意識することには実質的な意味はほとんどないと思っています。
ですから、受講生から「アメリカ英語を勉強したいからアメリカ人講師を希望」とか「イギリス英語を勉強したいからイギリス人講師を希望」などというお話をいただくたびに、「ポイントはそこではないんだけどな~」とかなり残念な気持ちになるのが正直なところです。
ただ、今回はその正直な気持ちを一旦横において、「アメリカ英語とイギリス英語の違い」を「発音記号」の視点で見てみたいと思います。
以下、本書より該当部分を引用します。
「標準アメリカ英語と標準イギリス英語の最も大きな発音上の違いは一定の母音の後の【r】(例えば、carの)【r】を発音するか否かです。この特徴を専門用語で、『r音化』と呼びます。『音化』とは、簡単に言うと、『ある音の音色を加えて発音し、その音の特徴をまとう』という意味です。つまり、r音化とは、前の一定の母音の後ろでrを発音すると考えましょう。重要なのはもともとの綴り字にrがあればr音化しますが、ない場合にはr音化しないということです。つまり、carはr音化しますが、spaはr音化しません。これを『チョコレートソースがけのバニラアイス』に喩えてみると分かりやすいでしょう。『バニラアイス(ベースとなる音)』が『母音』で、チョコレートソースがr音化の【r】になります。つまり、メインは母音で、トッピングが【r】ということです。そうすると、標準アメリカ英語はその特徴から『チョコレートソースがけのバニラアイス』で、標準イギリス英語はその特徴から『チョコレートソースなしのバニラアイス』ということができます。例えば、carという単語は、標準アメリカ英語では【r】を発音しますが、標準イギリス英語では【r】を発音しないので、日本語に近い『カー』という発音になります。」
次にその表記の仕方についても引用します。
「『r音化』には以下の三つの表記の仕方があります。
はじめに、英和辞典などでcarを調べると、通常【ka:r】という発音記号が出てくるでしょう。辞書によっては、【ka:r】の【r】がイタリック体(斜体)になっていることがあります。後者の場合はその音が省略される場合があるということを示しています。(その場合には、前者が標準アメリカ英語で後者が標準イギリス英語であることが一般的です。)
2つ目に、辞書によっては【ka:r|ka:】のように縦の棒【|】の前後に発音記号が書かれている場合があります。これは、左が標準アメリカ英語で右が標準イギリス英語であることが一般的です。
3つ目に、以下のような補助記号で表す場合があります。
また、辞書によっては
のような一筆書きの記号を使うこともあります。
注意しなければならないのは、『r音化』と『r』は違うということです。簡単に言えば、carの【r】である『r音化』はあってもなくても意味は変わりませんが、ringやprettyにおいては【r】がないと意味が変わってしまう、あるいはそのような単語が存在しなくなってしまいます。『r音化』か、あるいは通常の『r』の音化は、『r』があると意味が変わるか否かで判別します。」
このように整理してみてしまえば、今まで感じていた「違和感」が嘘のように消えてなくなります。