
「テスト効果」とは何か
2026年9月9日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「英単語学習の科学#373」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは「テスト効果」についてです。
テスト効果とは、記憶に資する「学習」と「テスト」という二つの要素のうち単語記憶により強い影響を与えるのは「学習」の回数ではなく「テスト」の回数であり、テスト自体に学習効果があるという現象を言います。
このテスト効果に関する研究は1917年には始まっておりすでに100年以上の蓄積があるのですが、その中で特に重要な2つのテスト効果の研究についてご紹介します。
①アメリカのパデュー大学のジェフリー・カーピキ教授とワシントン大学のヘンリー・ロディガー教授が行った研究
スワヒリ語の単語40個について、「chakula=food」のようにその意味を覚えさせる「学習」と「chakula=?」のように質問形式で答えさせる「テスト」を次のようなパターンで行いました。
条件1(統制条件) :学習→テスト→学習→テスト
条件2(繰り返し学習) :学習→テスト→学習→テスト→学習→学習
条件3(繰り返しテスト) :学習→テスト→学習→テスト→テスト→テスト
条件4(繰り返し学習&テスト):学習→テスト→学習→テスト→学習→テスト→学習→テスト
一週間後に事後テストを行い4つの条件の学習効果を測定した結果はこうです。

条件4は学習・テストともに4回と純粋に回数が多いのでスコアが高いこと、また条件1は逆に両方とも2回と回数が少ないのでスコアが最低だというのは当然に納得ができます。
しかし、条件2ではその最低の結果の条件1よりも学習の回数が2回も多いのに条件1と同じ、また条件3は最高の結果の条件4よりも学習が2回も少ないのに条件4と同じ結果が出ています。
この結果から明らかになったのは、単語習得に影響を与えるのは学習の回数ではなくテストの回数であり、テスト自体に学習効果があるという事実です。
②ワシントン大学のジョー・バークロフト教授が行った研究
アメリカの大学生を被験者にして統制条件とテスト条件という二つの条件の学習効果を比較する次のような実験をしました。

条件1も条件2も時間は同じ27秒、そして実験のスタート時にまずスペイン語の単語(serrote)とその意味を表すイラストが3秒間表示されます。
条件1ではその後に同じものが12秒、またその後に同じパターンで12秒表示されます。また条件2ではその後にイラストのみが6秒間表示されつつそれに対応するスペイン語の単語を思い出すことを求められ、その後その答えであるserroteが6秒表示され、同じパターンで6秒ごと表示されます。
その直後、二日後、一週間後に事後テストを行いましたが、そのいずれにおいても、条件2が条件1よりも正答率が高く、単語とその意味を表示する時間を6秒ずらすだけで記憶の定着度を高められることが分かったのです。
ですので、単語帳で学習する際は、英単語とその和訳をただ眺めるのではなく、和訳を隠して英単語から和訳を思い出したり、英単語を隠して和訳から英単語を思い出すなど、何らかのテストの要素を加えたほうが記憶への定着度が飛躍的に高まるはずなのです。
ちなみに、こんなに効果の高い「テスト」なのにもかかわらず、日本でもそして英語圏の多くの国でも「テスト(test)」という言葉自体にネガティブな印象があるので、testではなくretrieval(想起)もしくはretrival practice(想起練習)という用語を好んで使用する研究者が多いようです。
ただ、このように「テスト効果」は語彙の記憶にとても有効な方法ではありますが、テスト効果で新しいものを覚えたとしても、その記憶は時間とともに薄れ、やがて忘却されてしまうことは避けられません。
そのため、それを記憶に定着するためには定期的な復習が欠かせないのは明らかですが、その論点についてはすでに「集中学習と分散学習」というテーマで学び記事にしていますのでその解説はそちらに譲ります。









