日本人と英語

リスニングのアドリブ力を鍛える方法

2024年6月24日 CATEGORY - 日本人と英語

ここまで書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の読み方 リスニング編」からテーマをいただいて書いてきましたが、第六回目の今回が最終回です。

最終回のテーマは「リスニングのアドリブ力を鍛える方法」です。

話しているうちに、自分でも何を言っているのか分からなくなったり、話がとっ散らかってしまったりするなんてことは、もちろんのこと、その人があえて独特の言い回しを使う可能性がある、つまり「破格(イレギュラー)」な文章が耳に入ってくるなんてことは母国語では当然のことと思えるのに、外国人を前にして外国語を聞くという立場になったとたん、理解できないのは相手ではなく自分のせいだと思ってしまう、、、。

残念ながらこれは外国語学習者の哀しい性と言ってもよいかもしれません。

しかし、本書では最後の章にて、この当たり前のことをちゃんと指摘してくれ、次のように私たちを落ち着かせてくれています。

「文法通りに話してくれているならまだしも、ルールを無視した表現や構文なんて、ただでさえスピーディな理解が求められるリスニングでいざ出てきたらお手上げだと思う方もいるかもしれません。確かに破格的な現象は慣れないうちは面食らう可能性のある難物です。しかし、今まで確認した文法知識や定型表現などに基づく先読みの方法を徹底していけば、文法のルールを破っている箇所に気づくこと自体はさほぼ難しいことではありません。後は、気づいた際に慌てず対応できるよう、具体例を用いた訓練を積んで破格の典型的なパターンを押さえておけばよいということです。」

では、具体例を見てみましょう。

Amazon創業者ジェフ・ベゾス氏のインタビューにて

「アマゾンが世界にもたらしたものは何か?」との質問とそれに対する回答

(5:58~)

Interviewer:

If you looked at what you brought and the legacy of innovation, how would you describe that? 

Bezos:

(1)Well, I think what, you know, the, Amazon’s, what I would hope Amazon’s legacy would be is earth’s most customer-centric company. What we have always wanted to do is raise the standard for what it means to be custmer-centric, (2)to such a degree that other organizations, whether they be other companies or whether they be hospitals or government agencies, whatever the organization is, they should look at Amazon as a role model and say “How can we be as customer-centric as Amazon?”

(1)「冒頭部分はまさに話し言葉といった感じです。I think whatまで言いかけたところで少しポーズとつなぎ言葉が入り、そこから方向性を変え、the,,さらにAmazon’sと言いかけますが、またそこで思い直して、最終的にはwhat I would hope Amazon’s legacy would be(私がアマゾンの遺産がこうあってほしいものであってほしいかというと)という形に落ち着いています。前半はほとんどまともな形を成していないので、要するにwhat I would hope、、、以下が最終的に言いたいことだというのはつかめます。」

解説の途中で、私個人の意見を挟ませていただきたいのですが、ここで最も重要なポイントは、世界最高水準の頭脳を持っているであろうあのベゾス氏であっても、即興的な文構成の場においては「ほとんどまともな形を成していない」ような発言をしてしまうことがあるという事実です。

ならば、外国人である私たち英語学習者が発言の途中でまともな形を成せなくなって何を恥ずかしがる必要がありましょうや!!堂々と聞き、堂々と話せはいいと確信できます。

続けます。

(2)「to such a degree that,,(∼のほどにまで)とかなり重いフレーズが来ます。その前で、(顧客中心であるとはどういうことかの基準を上げること)と言った後、どれくらい基準を上げるのか、その度合いの説明を続けています。最大のポイントとなるのがこの『どのくらいに?』の説明となっているthat節内の構造、特に切ないの主語と述語動詞の部分です。先頭にother organization(他の組織)という比較的分かりやすい名詞句があるので、これを主語だと考えつつ、それに対応する述語動詞が出てくるはずだと先を予測します。後ろにコンマが入り、whether they be,,,という形(beは仮定法現在の形)が続きます。想定される組織のタイプは多様だというニュアンスを出しつつ、その具体例を挙げるための副詞節の挿入だと考えて、述語動詞を待ちます。そうすると、whether 節が2つ(『他の組織』の具体例)、さらにそれをまとめる形でwhether説が1つ登場し、そろそろ述語動詞が出てくるはずだというところでthey should look at,,,という形にぶつかります。このtheyはother organizationsを受けたものであり、主語であるother organizationsと述語のshould look,,,の間にかなり長い補助的な分が入ったために、SVの関係が分からなくならないように改めて代名詞で言い換えたものと判断することができるでしょう。」

この項目のタイトルを見たときは、なんだかんだ言っても最後の決め手はやっぱり「アドリブ」になっちゃうのか、と開き直りそうになりました。

しかし、このように「破格(イレギュラー)」の部分を丁寧に解説されたことで、実に逆説的ではありますが、しっかりとした「文法」「語彙」そして「構文」の力があるからこそ、「アドリブ」をきかせることができるのだということを体感的に理解することができました。

それによって、「リーディング」のトレーニングを応用する形で「リスニング」向上を目指すという本書の主題の意味を理解できた気がします。

 

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