
法助動詞の研究
2021年10月21日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の思考法」からテーマをいただいて書いてきましたが、第八回目の今回が最終回です。
最終回のテーマは「(法)助動詞」です。
法助動詞に関しては、以前にこのブログで取り上げ、その定義を
「can may will shall mustなどがそれにあたり、法とは英語のmood、すなわち「気分・感情(ムード)」、具体的には、義務性、可能性(将来性)にかかわる気分を表現することで動詞を助ける言葉です。」
とさらっとまとめていました。
今回は、このさらっと定義された中にある「義務性、可能性(将来性)にかかわる気分」について本書の中でふれている部分がありましたのでそちらについてご紹介します。
「助動詞には基本的に二つの使い方、意味がある。一つは義務や許可を相手に与える意味であり、もう一つは物事の認識の仕方を表す用法である。/の左が前者、右が後者である。
can: ~できる/~でありうる
may: ~してもよい/~かもしれない
must: ~しなければならない/~に違いない
should: ~すべきだ/~なはずだ
will: ~するつもりだ/~だろう
ところが、特にアメリカ英語では、mustは義務を表す用法として近年ほとんど使われなくなってきている。「~しなければならない」という義務の意味で言う場合は、You must,,,というより、You need,,,やYou have to,,,のような若干よりやさしめな言い方の方が用いられる。立ち入って命令したりすることが、言い方としては減退しているのである。
You must do something for me.というような命令調のmustはすたれ、She must be in Kanazawa.
というような強い推量にしかmustを使わなくなっている。これは、少なくとも日本と英語圏を見る限り一般的な傾向のように思われる。社会生活の様々な局面が『個』化しているというのは世界的な傾向なので、他の文化圏でも起こっていることかもしれない。ネット社会がより他人の『個』の領域に入り込みにくくしているのだろうか。それは『独立』思考の変化ということでもある。にほんでも、「~みたいな」「私的には」のようなフレーズや政治家を含め、「~させていただき」の乱用など、一昔前ならまどろっこしい言い方が普通になってきている。映画『男はつらいよ』シリーズを見ていても、明らかに初期のころの方がセリフが威勢が良い。」
本書ではこのように英語の思考法の要素である「個」に対する観点からの前者の「義務性」に関する説明が中心となっていますが、後者の「可能性(将来性)」に関する説明も付け加えたいと思います。
「可能性(将来性)」とは本書の説明にもある通り「推量」のことを意味します。そして、それぞれの助動詞は推量の強さによって相対的に区別されます。
それぞれの助動詞の推量の強さの度合いについて調べました結果を以下にまとめます。ちなみに、パーセンテージは体感的なものです。
第1位 must (98-100%) ~に違いない
第2位 will (90-98%) ~だろう
第3位 should(70-90%) ~なはずだ
第4位 can (50-70%) ~でありうる
第5位 may (30-50%) ~かもしれない
こうしてみてくると、一つ一つの文法項目は当然ですがそれぞれがグラデーションのように人間の感情と密接に関連していることが分かります。
つくづく言語って奥が深いなと思います。