命令形とは仮定法である
2024年9月3日 CATEGORY - 日本人と英語
前回より、書籍紹介ブログにてご紹介した「サバイバル英文法」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「命令形」です。
一般的な理解では、英文法における「法(mood)」には「直説法」「仮定法」「命令法」の三つがあると言われています。
ちなみに、法(mood)とは「叙法」ともいわれ、文が表す出来事の現実との関係(事実的か反事実的か)や意図、聞き手に対する態度などを表すものとされています。
そして、「直説法」は事実的「仮定法」は反事実的、「命令法」は(命令の)意図・態度を表すとも。
ただ、私としては、この「法」というものの理解を深めるには、「直説法」は事実的「仮定法」は反事実的という出来事の現実との関係のみを表すものとして、三つ目の「命令法」については、この概念から除外したほうがいいのではないかと考えてきました。
実際に、私が主宰する「文法講座」においても、法の概念については「直説法」「仮定法」のみで取り上げ、命令法については「命令形」として、現在形の概念説明のところで、「I がyouに対してのみ、現在において(たった今)命令することしかできないから、Youを省略して、現在形(原形)で表現することとなっている」という説明にとどめ、さらっと終わりにしています。
もちろん、私もこの説明が「不完全」なものであるということは重々承知していますが、繰り返しになりますが、「命令」の表現の仕方のマスターの容易さと、「法」という概念の理解の容易さを考えたときに、可能な限りシンプルさを重視すべきだという考えでこの選択をしていますし、現時点においてこのやり方を変えることはないと思っています。
ただ、本書には少なくとも法の概念については「直説法」「仮定法」のみで済ませつつも、「命令」の表現の解説をもっと筋を通した形で行っている部分がありましたので、該当箇所を以下に引用します。
「仮定法現在の【提案】のパターンとして例えば、She suggests that he leave now before rush hour starts.(彼女は彼がラッシュアワーが始まらないうちに出発することを提案する。)つまり、これは広い意味で命令なわけです。そして、それはまだ現実に起きてないということです。命令するからには、そのことが現実に起きているわけがありません。出発した人に向かって『今出発しなさい』というのは変です。このように、命令(内容)とは『反事実』なのです。英語の世界では、反事実の内容には仮定法を使います。」
このように、本書では「命令法とは仮定法(現在)である」と明言しているわけではありません。
しかし、かなりその方向に誘導していることは確かだと思いましたので、「命令・仮定法・動詞の原形」などのキーワードでネット検索をした結果、「仮定法現在と命令法」というウェブページを見つけて、その考えに強い自信を持つことができました。
このことによって、
「I がyouに対してのみ、現在において(たった今)命令することしかできないから、youを省略して、現在形(原形)で表現することとなっている」
という上記の理解をもう少し進めて、
「I がyouに対してのみ、youがこれからすること(いまだ反事実の内容)を命令することしかできないから、youを省略して、現在形(原形)、すなわち仮定法形の形で表現することとなっている」
という理解にアップデートできるかもしれません。
ただ、やはりそれでも、命令形の学習をこの説明だけのために最終である「仮定法」の段階にまで持ち越すということが、「言いたいことを英文法に乗せて表現する」ということで短期間での文法完成へのモチベーションを保つ上で上策かどうかは、慎重に決するべきことかとは思います。