日本人と英語

小泉八雲の天気・天候に関する解説

2021年6月2日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「ラフカディオ・ハーンの英語教育」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは「天気と天候」です。

これなどは、再び母国語を客観的視点から見直すチャンスを提供してくれる典型例として取り上げたいと思います。

「天気」と「天候」、これの違いを日本語で躊躇なく説明することができる人はどれほどいるでしょうか。

私も、自信をもって即座にと条件を付けられたら、正直かなり厳しいものがあります。

それをラフカディオ・ハーンは以下のように非常にスマートに英語で日本人の生徒に解説をしています。

「Climate is the constant condition of the air in a zone, region or country. (from the Greek word klima, “a belt,” “a girdle” (obi), ‘a zone” – a region of the world.) Climate never changes. Weather (always changes) (from the ancient German word wetar (storm).) Weather is the condition of the air about us every day. Rain, sunshine, heat, cold, frost, hail, snow, fog, damp, mist, wind – all these are changes of weather.」

この英語の日本語訳は以下の通りです。

「climate は一区域、地域、国における一定の大気の状態のことを意味します。(ギリシャ語では klima といい、a belt「地帯」、a girdle 「帯」、a zone「地域」のことで世界における一地域のこと)、一方でclimate (気候)は決して変化することはありません。 weather (常に変わるもの。古代ゲルマン語のwetar(嵐)から派生した)天候とは日々の我々の周囲の大気の状態です。雨、晴 れ、暑さ、寒さ、霜に霧、雪、濃霧、湿気や 霧、風といったこれらのすべてが天候の変化によるものです。」

また、続けて「風」に関する解説をご紹介しますが、こちらなどは「英語」という一外国語の教育の域を軽く超えていながらも、それを学生の知的好奇心に上手につながているのがよく分かります。

「Wind is air in motion. Breeze – “a soft or gentle wind.” Gale – “a very strong wind.” (from a Danish word gal meaning “mad.”) Storm (from a Sanskrit word Stur meaning “to scatter,” “to throw down.”) A very great storm in the Indian Ocean, in the Sea of Japan, or in the China Sea is called a typhoon. This word is delivered from the Chinese to fung (Japanese taifū), – but it is spelled curiously Why?- Because the ancient Greeks had a God of storms called Typhon. When the first English sailors went to China and heard the Chinese say to fung, they thought the Chinese word was the same as the Greek one, so they spelled it in nearly the same way.」

こちら日本語訳です。

「風とは空気 (大気) の動きです。 Breeze (そよかぜ) – 「柔らかい、おだやかな風」 Gale  (疾風、強風) – 「とてもつよい風」(デ ンマーク語の gal から派生。「気が狂った」 という意味がある。) Storm (嵐)-(サンスクリット語の Stur から派生。「散らす」「投げ倒す」という意味があ る。) インド洋や日本近海、中国近海で発生する最も規模の大きい嵐のことを、typhoon(台風) といいます。この語は、中国語の to fung* から派生しています (日本語では台風という )。 – この単語のつづりは大変興味深いといえます。どうしてでしょう?  古代ギリシャ人には Typhon と呼ばれた嵐の神がいたからです。最初のイギリス人の船乗りが中国に行って中国人が to fung と言うのを聞いたとき、その中国語がギリシャ語の語彙と同じだと思ったのです。そこで彼らは綴りを発音と同じようにしたという訳です。 」

このように、ネイティブスピーカーの一方的な押し付けではなく、日本語と英語、西洋と東洋の文化の違いなどの深い理解を基に実に丁寧に取り扱っていることがよく分かります。

私も自らが主宰する「全項目を網羅した英文法を血肉化する合宿」を運営するにあたり、受講生のどんな質問にも答えられるだけの知識と論理を用意することを心がけていますが、このラフカディオハーンの授業姿勢には非常に大きな感銘を受けました。