「定型表現の丸覚え」は強力な武器だ
2024年6月23日 CATEGORY - 日本人と英語
これまで書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の読み方 リスニング編」からテーマをいただいて書いていますが、第五回目の今回は、リスニングを有利に進めるための「定型表現の丸覚え」についてです。
前回までの内容で、本書の対象である「リスニング」に強くなるということは、リーディング・リスニング問わず、それが英語である以上、基本的なルールのパターンをあらかじめ知っておくことで、安心して次に「来るべきもの」が来るのを「待つ」ことができるようになることだということを理解しました。
その意味で言えば、今回の「定型表現の丸覚え」というのは、それらパターンのうち「カタマリ」として最も大きいものだということになります。
本書では、その実例を動画を伴って紹介してくれているので、以下ご案内します。
これは、自分の飼っている子犬を守るため、とっさに熊に立ち向かい素手で追い払った17歳の少女へのCNNのインタビューで、リポーターの「どうしてそこまでしようと思ったのですか?」という質問に少女が答えているものです。
英語学習云々とは別に、「絶対にマネしないでください」と注意書きを入れるべき衝撃映像になっていますのでご注意ください。(笑)
(1:50~)
Well,uh, I was, as I was saying,uh, this dog Valentina, uh, she was in danger really. And, uh, she was so important to the family. She is my mother’s emotional support animal. And I couldn’t bear to let anything happen to her because I know, like, the pain would have been way too much for, like, my mom to handle, and really like, I think that I did this for her.
ポイントとなるのは第4文の前半で、ここではcouldn’t bear to不定詞「~することなど耐えられない」とnot let anything happen to「∼に何も起こらないようにする」という2つの定型表現が連続して使用されドッキングしたような形になっています。
2つの定型表現を結ぶbear toとletの間に少しポーズがあることを除けば、スラスラとナチュラルスピードで発音しているため、学習者にとってはなかなか一度で聞き取ることが難しい箇所です。
しかし、この2つの表現を丸ごと使うことを意識して「カタマリ」で覚えている人にとっては、仮にbear toやanything happen to の部分しかしっかりとは聞き取れなくとも、couldn’tやletの部分をある程度までは知識から補うことが可能です。
続いて、第4文の後半のbecause以下も注意が必要です。
「the pain would have been way too much for my mom to handle」
これは、助動詞の過去形+have+動詞の過去分詞ですからすなわち、「仮定法過去完了」の形ですから、「もし犬に何か良からぬことが起こっていたら(実際には起こらなかったのだけど)」という仮定を前提にして発せられたものと判断することができます。
つまり、「その苦しみは私の母がうまく対処するにはあまりに大きすぎるものになっていたでしょう」といった感じになると思います。
一つ一つの「カタマリ」としてはそこまで高いレベルとは言えないまでも、このレベルのものが一つの発話にいくつも入ってしまっていれば、いかに高い文法力と語彙力のある人であっても、即座に聞き取ることは簡単ではないはずです。
要するに、文法・語彙知識を有していることと、それをノーマルスピードで受け止めることとは全く次元の違うことを予め認識した上で、対処法を考える必要があるということが良くわかります。
「定型表現の丸覚え」は強力な武器だという著者の主張には同意せざるを得ません。