日本人と英語

意図的語彙学習と付随的語彙学習

2026年9月7日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「英単語学習の科学#373」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「意図的語彙学習と付随的語彙学習」です。

まずは、この二つの用語の定義から見てみましょう。

「意図的語彙学習」とは、

語彙習得を主目的とする活動において語彙を学習することです。例えば、単語カードなどを使用した単語学習です。

「付随的語彙学習」とは、

語彙習得が主目的ではない活動において、偶発的に語彙が習得されることです。例えば、英語の雑誌や新聞を読んでいるときに、出てきた単語の意味を文脈から自然に習得するような学習です。

昨今のコミュニケーション重視の英語学習の文脈からは、意図的学習が軽視され、多読などを通じた付随的学習が奨励されるケースが増えていますが、それは本当に正しいのだろうかという疑問に対して本書は次のような研究結果を紹介しています。

オランダ・フローニンゲン大学のジャン=アリアン・モンドリア博士は、文脈からの語彙学習を『推測(inferring)』『確認(verifying)』『暗記(memorizing)』の3つに分け、それぞれが語彙習得にどのくらい貢献するかを調べるために、38人のオランダ人高校生に対して次の4条件でフランス語の単語を学習させました。

①推測(単語の意味を文脈から推測させる)

②推測∔確認(推測が正しいかを単語リストで確認させる)

③推測∔確認+暗記(単語リストで単語の意味を暗記させる)

④暗記

ちなみに学習効果のみならず学習効率も加味する必要があるため『1分あたりに習得された単語数』を比較する形で検討をした結果、以下のような結果が得られました。

この結果は、明らかに昨今の単語学習の文脈、及び私たちの直感に反するものです。

「推測」と比べて「暗記」の効率性は5倍(効果では8倍)以上高く、この調査からは「付随的学習に寄り習得される単語はごくわずかであり、語彙学習自体を目的とした意図的学習の方が効果・効率はともに高い」という結果が導き出されました。

ただし、この結果は別の観点を加えて見てみる必要があります。

それは、「カバー率(学習者の知っている単語=既知語がテキスト中の全体語の何%を占めているかを示すもの)」という概念が付随的学習の効果に影響を与える要因が絡んでおり、このカバー率が高ければ高いほど(テキスト中の単語を知っていれば知っているほど)、付随的学習が成功する可能性が高くなるということが別の研究から明らかになっているのです。

これは、初心者は、まずは有無を言わせずカード学習などの意図的学習によって既知語を増やすことに徹し、カバー率が高まってきたら(テキスト中の単語の内分からない単語が少なくなってきたら)多読などの付随的学習の割合を増やしていくということです。

それはそうですよね。

推測しようといってもテキスト中に10%も分からないものがあったなら、それらを文脈から推測することなんてできるわけありませんから。

これは、「英単語「1万語」習得法 #372」の関連ブログで確認した学習の「広さ」と「深さ」の概念にぴったりと当てはまります。

つまり、「意図的語彙学習」と「付随的語彙学習」はどちらが優れているかどうかを争うようなものではなく、学習の段階ごとにどちらが適切なのかを問うべき性質のものだということです。

 

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