
抽象名詞とは何か
2024年9月3日 CATEGORY - 日本人と英語
今回より、書籍紹介ブログにてご紹介した「サバイバル英文法」からテーマをいただいて書いていきますが、第一回目のテーマは「抽象名詞」です。
まずは、名詞の種類を念のためおさらいしておきましょう。
名詞は、
1.普通名詞:apple(りんご)やdesk(机)などいわゆる一般的な名詞
2.集合名詞:family(家族)やcompany(会社)など、ある特定の集団を表す名詞
3.固有名詞:人名や国名など、他と区別するために与えられる固有の名称
4.物質名詞:water(水)やwood(木)など、物質・材料を表す名詞
5.抽象名詞:happiness(幸福)やmoney(お金)など、感情や概念など抽象的なものをあらわす名詞
の5つに分類されます。
そして、それぞれこの分類とは別に「可算名詞」「不可算名詞」の概念によって分類されることになることは、すでにこちらのブログ記事でご紹介済みです。
その上で、なかなか理解が難しいものとして「集合名詞」についてはまた別個の記事を作って詳細解説しています。
また、最後の「抽象名詞」についても「集合名詞」に負けず劣らず難しいものであるということは、上記「可算・不可算」の概念を取り上げた記事において以下のような著者の諦念を記載しました。
「抽象名詞は特に難しい。日本語的な感覚からは抽象名詞が指すものは目に見えないものだから全て不可算のように思えてしまう。しかし実際には、ideaのようにほぼいつも可算名詞と考えてよいものもあれば、evidenceのようにほぼいつも不可算の名詞もある。しかも、多くの抽象名詞は可算・不可算両方が可能である。大抵の辞書は、【U;C】などと簡単に両方ありの記述があるのみだ。このように書いてあると学習者は『どっちでもいいのね』と思いがちだがそうではない。これは文脈によってどちらの用法もありうる、ということを示しているのであり、可算・不可算のどちらが良いかは、いま書こうとしている文脈でのその名詞の意味によって決まる。私自身、抽象名詞の可算・不可算の使い方は、英語論文を書くとき、最も自信が持てないところだ。」
本書には、その難しいとされるこの抽象名詞の「可算・不可算」のうちの「不可算」の部分についての興味深い説明がありましたので、以下該当部分を引用します。
「不可算名詞扱いの抽象概念はほとんど『目的・習慣』を表す名詞としてまとめられます。また、普段は普通名詞で可算名詞としての用法が主流でも、量や抽象的な概念を示したいときには、抽象名詞として扱うことがあります。普段は可算名詞として使う名詞にaも複数のsもつかないならば、その時は『量』や『目的・習慣』を表すということです。切っても変わらない量扱い、もしくは目に見えない目的・習慣の扱いになるのです。例えば、appleなら普通はan appleですが、ウサギの形に切ったリンゴやサラダやヨーグルトの中にあるリンゴ片などは、appleと不可算名詞となります。また、I go to school.のschoolにはaがついていませんが、『量』というのも当てはまらなそうなので『目的・習慣』と目星をつけます。学校の目的、学校で習慣として行うことって何でしょう?勉強ですね。そうです、このschoolは『学校(の校舎)』という意味ではありません。辞書で引くと【C:学校(の建物)】と【学校(の教育)・授業・勉強】と二つの項目に分かれていることが分かります。したがって、I go to school.は『私は勉強しに行きます』が正しい解釈です。単に待ち合わせで学校に行くときや、保護者が学校に行くときにはI will go to the school.と表現します。ちなみに、schoolはギリシア語で『余暇』→『余暇に行う学び』という意味で、勉強という意味のほうが本来の意味にも忠実です。もうひとつ、I go to bed.を挙げておきます。このbedの目的とは何でしょう。睡眠ですね。だからgo to bedは『寝る』という意味になるわけです。もし、go to a bedならば単に『ベッドのほうに行く』となります。」
非常に分かりやすく有益な情報だと思います。
ただ、それならば、上記の引用の中の「ideaのようにほぼいつも可算名詞」という指摘には納得できても、「evidenceのようにほぼいつも不可算の名詞もある」という指摘に対しては、「証拠」とはどのような『目的・習慣』を表しているのかと悩んでしまいます。
そこで、evidenceの語源を調べてみましたら、「e-はラテン語のex-で『外に』、vidは『見える』という意味からくることが分かりました。
ですから、「外に見えている」ことの目的は「証拠(能力)」というふうに無理やりこじつけてみましたが自分としても納得感は30%程度といったところでしょうか。
やはり英文法は誰か特定の人が作ったわけではないので、どこまで行ってもこういう説明のつかないことは存在してしまうようです。