日本人と英語

発信語彙の増強法③メタファー

2026年8月30日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「英単語「1万語」習得法 #372」からテーマをいただいて書いていく中で、第二回目から「発信語彙」の強化に仕方について見ていきますが、三つ目は「メタファー」です。

「コロケーション」「フレーズ」に加えて「発信語彙」の強化に重要になるのが、一つの単語から意味を広げて多義語を作る「メタファー」という仕組みです。

以下に、動詞runを使ってその内容を確認します。

⓪He runs fast.(彼は速く走る)

①The road runs parallel to the river.(道路が川と平行に走っている)

②The show will run for six weeks.(そのショーは6週間続く)

③She runs a small company.(彼女は小さな会社を経営している)

④He runs for the presidency.(彼は大統領選挙に出馬する)

高頻度語の多くは「多義語」です。

高頻度、すなわち使われれば使われるほど意味は様々な方向に拡張していきます。これを言語学で「意味拡張」と呼びます。

この動詞runは、初級レベルでは⓪のように「走る」ですが、中上級に進むにつれて①「続く(物理的に)」②「続く(時間的に)」③「経営する」④「立候補する」のように拡張することで多義的な単語になっていきました。

ただ、それらを全て個物に暗記するのは非効率であるため、重要なのはその単語の意味の「コアイメージ」をつかむこと、例えば「run」だったら「一定方向に継続して動く」というイメージです。

このコアイメージから多義に拡張していく過程で重要となるのが「メタファー(比喩)」的概念です。

すなわち、「抽象的なものを具体的なものに喩える」ということです。

以下にメタファーの類型を3つ紹介します。

(1)存在メタファー

抽象的で捉えどころのない概念に「存在」を与えるメタファーです。本来は実態がないものを物・容器・物質として扱えるようにする最も基本的なメタファーです。これにより抽象概念を数えたり、分類したりすることが可能になります。

ex)keep ~in mind/out of my mind/an open mind

(2)方向メタファー

上下、前後、内外、中心‐周辺といった空間的な方向性を使って抽象的な概念を組織化するメタファーです。これらは私たちの身体経験と文化的価値観に深く根差しているものです。もっとも代表的なものは「上は良い」「下は悪い」という上下に良し悪しを対応付けるものです。

ex)high quality/top performance/low standard/hit the bottom

(3)構造メタファー

ある概念領域の豊かで詳細な構造を別の概念領域に体系的に写像するメタファーです。存在メタファーが抽象概念に「存在」を与えるだけなのに対し、構造メタファーは複雑な内部構造やその領域で起こる因果関係まで写し取ります。

ex)Argument is war.という大枠の下、

attack someone’s position/defend an argument/win an argument/lose fround in a debate

というような表現が生み出されていきます。

このように、「意味拡張」によって、単語がもともと持っているコア的な意味からどんどん広がっていき、「多義語」が形成されていくのだということが良く分かり、確かに「発信語彙」の強化につながることが理解できました。

またそれ以外の注意点として、抽象的な概念を具体的で経験可能な概念に喩えることで、(最後の例でよく分かるように)メタファーは無意識のうちに思考の枠組みを規定し、文化や価値観を形成する力を持っているということはあらかじめ理解しておくべきかもしれません。

 

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