「精速読」のススメ
2024年12月8日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語上達完全マップ」からテーマをいただいて書いていますが、第四回目のテーマは、「精読」と「速読」の関係です。
昨今、特にTOEIC受験熱の高まりによってかつて大学受験で重要視されていた「精読」の必要性が低下し、代わりに「速読」の必要性が圧倒的に高まっています。
しかし、私はこのことが「精読」が不要で「速読」だけを強化しようとする考えには常に違和感を感じてきました。
内容を理解するための内容理解(精読)ができない状態で、それをスピードを上げて読む(速読)ができるとはどういうことだろうかと思ってしまうからです。
本書において著者は、この件について以下のような考え方を提示し、その上で「精読」と「速読」の融合=「精速読」という考え方を提唱されています。
「精読ができなければ速読・多読などできるはずはありません。ただ、精読を頑張っているだけでは速読・多読ができるようにはならないことも事実だ。それはつまり、筋力トレーニングはすべてのスポーツの基本だが、筋力トレーニングだけをやってもそれぞれのスポーツは上手にはならないのと同じです。筋力の増強の上に、各スポーツに見合ったトレーニングが必要なように精読ができて初めて速読・多読に特化したトレーニングができるようになるということです。ただ、その精読から速読・多読への移行がうまくいかない学習者が多いものです。精読をある程度やり正確な読解の基礎を身に着けたら、速読・多読へ移るか、並行して行うのが、実用に足るリーディング能力を培う方法です。(一部加筆修正)」
こうした学習を続けていくと、ある時点で精読と速読が融合し、英語の本、雑誌、新聞などを読むことはもはや学習ではなく楽しみになり、それでいながら読めば読むほど雪だるま式に英語力がついていき、かつ全体をスピーディーに読んでいきながら、重要な箇所や難解な部分だけを必要に応じて速度を緩め丁寧に読むという緩急自在の読書、いわば「精速読」ができるようになると著者は言います。
以下で具体的にその方法を見ていきます。
まずは「精読」のトレーニングです。
①まずは自力で大まかに読解します。当然分からないものが多く出ると思いますが、時間をかけずに文構造を自分なりに分析しながら、分からない部分を浮上させるようにします。
②解説文の力を借りて完全に読解します。
③そこからあまり時間を置かずに読む(トレース読み)ことを2∼3回繰り返します。
解説文を受けて英文を理解してもそれはまだ仮のもので、自分のものになっていないためそのままではまたすぐに読めなくなってしまいますのであまり時間を置かずに説明された通りの読解を何度も繰り返すことでその文を完全に自分のものにするというわけです。
次に、(基本的な文法・構文・語彙によって書かれた英文の精読トレーニングが終了した前提で)「速読・多読」でつまづく原因と対策を挙げます。
①ゆっくりと正確に読むことはできるが、大量の英語を流れに乗りスピーディーに読むことができない。
語彙などに制限のある学習者用の読み物などで英文の流れに乗る体質を身に着けます(プレ速読・多読)。そのうちにある程度の語彙量もついてきて、だんだんとネイティブスピーカー向けの一般読み物に移行していくことが可能になってきます。こうすれば語彙力が限定的な時点でもある程度速読体質を身に着けられます。
②語彙不足。知らない単語が多すぎて読めない。
ネイティブスピーカー用に書かれた一般の英字新聞、雑誌、本などをいちいち辞書を引くことなしに読むには、少なめに見て1万語を超える語彙が必要です。そこまでの語彙を身に着けるためには、①で見ただんだんとレベルの高い読み物に変えていくやり方では何年もかかってしまいます。そこで一挙に語彙力を上げるやり方を次回の「ボキャビル」の記事にて紹介します。
ここではまず、①の原因の対策としての「プレ速読」に関して具体的に見てみることにします。
(1)完璧な分析、理解を求めず、6割以上分かれば良しとしてスピーディーに読む。
英文解釈のように正確に読み解く必要はありません。大まかに話の流れがつかめれば十分です。分からない単語に関してもそれほど潔癖になる必要はありません。キーになる単語以外は極力辞書を引かず、前後関係で推測するか飛ばしてしまって構いません。
(2)興味がある話、知っている話、予備知識があるものなど分かりやすいものを読む。
自分の専門分野やよく知られている童話、有名人の伝記、対訳本、学習者用の英字新聞などを選択します。
(3)飽きたら途中でやめる。
うんざりしながら100ページの本を数か月にわたって抱え込むより、2~30ページで放り出しながら1カ月で数冊に手を付けたほうが読みの量は増えます。大切なことは1語でも多く英語を読むことです。こんな風にしばらく続けていると、いつの間にかあなたは英語の波に乗っています。
続いて、本格的な英文読書へ。
一年くらいプレ速読を続けたら英文の流れに乗る体質は出来上がりますので、ボキャビル(次回記事)の力を借りて語彙力を高め、一般の英語の本や雑誌に移っていきます。
この段階ではもはや「英語学習」という認識ではなく、純粋に英文読書を楽しむという認識で全く問題ありません。ご自分の興味関心に従って読めば読むほど英語力が深まり、精読と速読の融合した「精速読」ができるようになります。