日本人と英語

英語の語彙が多くて文法が単純な理由

2017年8月4日 CATEGORY - 日本人と英語

先日ご紹介した「英語語彙大講座」は、一冊まるごと英語の語彙について説明しているという非常にマニアックな本です。

マニアックとはいえ、その説明は非常に分かりやすく書かれており、英語という言語をブリテン島の歴史に沿って深く理解できる良書でした。

当ブログでは、本書を参考に英語の語彙について何回かに分けて話題にしていきます。

第一回目の今回は、タイトルの通り、「英語の語彙が多くて文法が単純」な理由について考えてみたいと思います。

この理由を説明するには、英語が成立した場所であるブリテン島の歴史についてみてみる必要があり、当然本書にもその説明は詳しく書かれています。

しかし、読者の皆さんの中には覚えてらっしゃる方もいるかもしれませんが、当ブログ記事では以前に「英語の歴史」について、二回にわたって詳しく解説していますので、その流れについてはこちらをご参照ください。

この歴史を見るとすぐわかるのですが、ブリテン島は、「ケルト人」「ローマ人」「アングロサクソン人」「北欧人(ヴァイキング)」「フランス人(ノルマンディー公」によって征服されていて、使用される言語が、その都度その人たちが使用する言語に大きく影響された歴史を持っています。

基本的には、「アングロサクソン人」、すなわち北ドイツ地方にいた人たちの言語(ドイツ語の北方方言)をベースにしながら、多くの言語を取り込んでいったことから、単純に考えても大陸に存在するそれぞれの言語と比べて、「語彙が多い」というのは当たり前のことかと思います。

ですが、もう一つの疑問である「英語の文法が単純なのはなぜか」については、その歴史をなぞるだけでは分かりませんでした。

しかし、本書にはその疑問について非常に分かりやすい合理的な説明がなされていましたので、その部分を以下抜き出します。

「(アングロサクソン語と北欧語のような)互いに親族関係にあり、ある程度単語や文法も類似した言語を使う人間同士が交わると、名詞や動詞など意味を持つ単語が通じれば、大体言わんとしていることが分かるので、動詞の細かい活用や名詞の格変化、前置詞や冠詞などをだんだん省くようになっていく」

感覚的に理解するためには、たどたどしい日本語でやり取りするときを考えると分かりやすいかもしれません。

少しだけ日本語ができ、何とか意思の疎通が図れそうな外国人を目の前にしたとき、私たち日本人は、日本人に対して話す時に比べて、できるだけシンプルに伝えようとして、細かなルールを省くはずです。

まさに「赤ちゃん言葉」はその典型みたいな物だと思います。

この説明は、私の中では非常に理にかなったもののように思えました。

なぜなら、この理屈で考えると、日本語がなぜ「語彙も多くて文法も複雑」なのかが分かるからです。

日本語も、英語が北欧語やフランス語と交わったのと同じように、中国語を取り入れることで、圧倒的に語彙を増やすことに成功しました。

具体的には、従来からの大和言葉に加えて、漢語を追加しました。

しかし、日本人は自らの意思で中国語を取り入れたのであって、中国人に征服されたのではありませんでした。

ですから、「中国語を話す中国人」と「日本語を話す日本人」が交わるような機会はありませんでしたし、そもそも日本語と中国語は、言語的にアングロサクソン語と北欧語の近さとは比べ物にならないくらいに遠いことから、英語のような「単純化」は進まなかったというわけです。

このように見てみると、言語の研究というのは、少年の心をくすぐるような考古学的なワクワク感がありますね。