日本人と英語

「英語耳」獲得のための9か条

2026年7月31日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「『英語耳』独習法」では、「発音ができるとリスニングができる」を実現するための道のりを「発音」「語彙」「多読」のパートに分けて解説されています。

今回はその三つのパートに行く前に、その前提となる「心構え」の9か条をご紹介します。

書籍紹介ブログにも書きましたが、本書を読み進めていくうちに、そこまでやれば確実に成果が出るであろうし、私を含めほぼすべてのリスニングを最大の弱点としている日本人に対する著者のメソッドには耳を傾ける価値があると確信しました。

そのような確信は、冒頭の次の言葉によって強まりました。

「英語を学習してきたほとんどの人が、辞書を引き引き英語を読むことはできてもうまくは聞き取れないのです。そのように『完全に聞き取る』ためには、単語をたくさん知っていて、文章を苦も無く読めることが前提です。しかしそう思わず、『ただひたすら毎日英会話を聞き続けることが必要』と思い込んでいる人が多いようです。しかし、リスニングだけを長時間続けてもその地点には行けません。読んでわからない文章は聞いても分からないのです。知らない単語も聞いてわかりません。そして単語を文字で知っていても、発音を知らなければ通じず、聞き取れもしません。また、さらに重要なのは、英語を理解するスピードです。スピードを身につけて初めて『完全に聞き取れる』ようになります。このようなことを前提にして、以下の9か条を心に刻めば、今まであいまいだった目標が具体的で達成可能な目標に変わってきます。読み・書き・聞き・話し+単語の暗記の5つを『聞き取る』ことに関連付けて、その効能を整理し、学習計画を最も効率的なものにできるでしょう。」

では、実際に「心構え」の9か条を一つずつ見ていきましょう。

第一条 スピードがすべて。最終目標は三倍速での理解

英語を聞き取れるようになった人々に話を聞くと、口々に「あるとき突然聞き取れるようになった」と言います。実はそれは、あなたの中で英語を理解するスピードが、話すスピードを追い越した時期と一致します。頭の中で語彙、発音、文法、読解力などが統合され、そして英語を理解するスピードが話すスピードに追い付くと、本人が強烈に感じるぐらい劇的にリスニングの力が上がるのです。理想はネイティブが話すスピードの3倍速、ただしそれには数年はかかりますので、当面は1.5倍速を目標にしましょう。

第二条 すべての音を聞き取らなくてもよい

第三条 アクセントのある音節で単語を識別する

実際の会話では、子音・母音の2~3割はかなり手を抜いて発音されています。つまり、辞書にある発音記号が全部きちんと発音されている場合の方がむしろ少ないのです。したがって、全部聞き取ろうとしても音が消えていたり、いいかげんな発音になっているために聞き取れないのです。重要なのはアクセントのある部分(音節)の発音です。ネイティブは完全に聞き取れるのは、その部分がそれらしく聞こえることだけで十分だからです。この音節さえ聞き取れれば、脳の中にある単語の中から対象となる単語が一気に絞り込まれる(先読み処理)ことで効率化されます。単語の中にある音を全部聞き取ろうという必死な姿勢は必要ありません。

第四条 ネイティブと同じ語彙空間を脳内に持つ

ネイティブは、英単語を音節の音によって区別すること(第二条・第三条)によって、脳に膨大な英単語群を整理・格納しています。基本的にはこの単語を脳内検索するためのカギとなる「アクセントのある音節」の数は、約500種類です。これにさえ慣れてしまえば、数万語の英単語が一気に発音できるわけです。これで、どんな英文を見ても「昔から知っていた単語だらけ」という感覚になることができます。

第五条 日本語なまりの英語はネイティブには自然な発音に聞こえている

日本人の英語の発音の評価は、聞く人が日本語ネイティブかそうでないかで大きく違います。日本人が聞くと日本語なまりが入っていると感じる発音でも、日本語を知らない外国人が聞くと、ほぼ完ぺきな英語に聞こえる場合が多いのです。つまり、英語ネイティブの方がよほど日本人よりもあなたの英語の発音に寛容なのです。とはいえ、日本語なまりがあってもネイティブが「自然な英語だ」と聞いてくれるために必要なものがあります。それは英語のプロソディ(prosody)、つまりリズム、イントネーション、アクセントの位置、ポーズの位置、単語の区切りなどを総合したスピーチ全体に関わる情報です。

第六条 ネイティブは音節に漢字のような意味性を感じる

アルファベットは漢字と比べ無味乾燥でとらえどころがない思われがちですが、英語の語源を知るとスペルの組み合わせに漢字のような意味性を感じることができます。例えば「alp」という音節に共通するイメージは「白」です。ですので、alps(白山)albatross(白大鳥)album(本来の意味は「白板」)といった具合です。ちなみに、語源情報を含む部分には必ずアクセントがあるという発音上の特徴があります。英単語の場合には約400個の語源から約一万語の単語が派生しています。文章を構成する一つらなりの音から、このような音節をを利用して単語を切り出すことこそ、リスニングの本質なのです。

第七条 英単語は八千語程度を使いこなせれば十分

辞書を引かないで英文の意味を類推するには、目にした英文全体の95%は既知語である必要があります。ここまでくればネイティブ並みのスピードでスラスラ英文を読めるようになりますが、これが我々がゴールとする語彙数です。そしてその数はズバリ2万語。しかし、「発信語彙」(自分で言って書いて使いこなせる語彙)は8000語で十分です。この8000語を実際に発信語彙レベルまで習得できれば、「受容語彙」は自然とその三倍獲得できると考えられるので、2万語には容易に到達できるからです。実際には、初めは発信語彙1000語(自動的に受容語彙は3000語)を身につけ、日常会話でほどほど通じるレベル(英英辞典を引ける語彙数)を目指し、その後は発信語彙8000語の発音を徹底的に脳に刷り込みましょう。

第八条 文法の習得は英語を頭から理解するために絶対に必要

ここはこのブログの読者なら当たり前すぎるので省略しますが、一言だけ。「英文法の真髄」とは、「単語の位置にも意味がある」=「頭から理解していくこと」であるということを理解することにあります。

第九条 読書体験を「目で聞く体験」にすべし

最後に、完全な「英語耳」の完成のために最終的に必要となる「多読」について。読むことと聞くこととは実は目と耳というインプット器官が違うだけで、脳内では同じ辞書が検索され、同じ語源イメージが使われ、同じ文法処理がなされています。日本語では普通に行われているこうしたことが、英語でもできるようになると、その後は読んでも聞いても言語に関する「文字」と「音」の情報がどんどん脳内に整理・蓄積されていきます。つまり、読んで知ったことが聞いても分かるようになるのです。聞いて知ったことが読んでも分かるようになるのです。後は、日々の読書を楽しんでいるだけで、リスニング力や語彙力が知らない間にどんどん向上していきます。この状態での読書を「目で聞く」と呼んでいます。

以上を統合すると、最終目的地は「英語を意識しなくなるところ」ということになりそうです。

確かに非常に高いレベルであることは間違いありません。

しかし、「完璧に」と言いながらも、実際にはこのようにかなり細かく「手を抜くべきところ」と「徹底するところ」を区別した上で、その後者に対しては「完璧に」取り組むという意味で使っているということが分かり、私自身納得してこのメソッドを実践できたというのが正直なところでした。

 

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