日本人と英語

「見る」と「聞く」を熟考する

2022年11月11日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「ヘミングウェイで学ぶ英文法」からテーマをいただいて書いてきましたが、第六回目の今回で最終回です。

最終回のテーマは「『見る』と『聞く』」についてです。

英語は身近なことほど本当の理解が難しいと言われますが、これなどはまさにその典型だと思います。

日本では一般に、「見る」に関しては、「see」は「(普通に)見る」、そしてTVや映画などを見るときに使われることから「watch」は「(じっくり)見る」との区別があり、「聞く」に関しては「hear」は「(普通に)聞く」、そして英語の試験においてかつて「ヒアリングテスト」と呼ばれていたものがいつからか、ただ聞くものではなく真剣に聞くものだから「リスニングテスト」と呼ばれるようになったことからも、「listen」は「(じっくり聞く)」との区別がされているように思います。

このような理解からすると、「look」だけがその区別の整理から取り残されているようにも思われます。

しかし、本書を読む中で、この一般的な理解の仕方にはかなり問題があるのではないかと気づかされました。

以下に、本書の内容を参考に「見る」と「聞く」におけるきちんとした区別の整理をしたいと思います。

まず大前提に「look」と「listen」は自動詞で「see」「watch」および「hear」は他動詞という大きな違いがあります。

ですから、「look」と「listen」は目的語をとらないわけです。

それなのにも関わらず日本語の対応語としては「見る」「聞く」という他動詞に相当する言葉を当てていること自体が正しい理解を妨げる原因を作っていることになります。

「look」と「listen」の本来あるべき理解は、「意識的に器官(目・耳)を向けること(だからその後にatやtoを伴う副詞句を伴うことが多い)」です。

その一方で、「see」と「hear」の理解は「向こうから情報(音声・視覚)がやってくるのが分かること」です。

上記の二つの違いを明確に説明できる例文を以下に挙げます。

◆ I looked to see who said it.「私は目を向けたら誰がそれを言ったのかが見えた(分かった)。」

つまり、lookは「視線を向ける」という動作(自動詞)にすぎず、seeこそが「入ってきた視覚情報を確認した=見た」という動作(他動詞)です。

◆ I listened hard but could not hear anything.

こちらも、listenは「耳を傾ける」という動作(自動詞)にすぎず、hearが「入ってきた音声情報を確認した=聞いた」という動作(他動詞)であるということです。

その様な理解を基にすれば、「ヒアリングテスト」と呼ばれていたものがいつからか「リスニングテスト」に変わった理由は、「テスト」というものが真剣に聞くものだからということではなく、「真剣に耳を傾ける」ことをするものであって、結果的に「聞く(音声情報をキャッチする)」ことができるかどうかはその人次第のものだからと考えた方が正しいと思います。

そうなると「watch」だけが仲間外れになってしまいましたが、機能としては、「see」と同じ他動詞であり、意味の把握としても「watch=(じっくり)見る=集中して視覚情報をキャッチする」ということで、私たち日本人の一般的理解で問題ないようです。

とはいえ、この仲間外れ感がどうしても気持ち悪くて、「聞く」という動作に「(じっくり集中して)聞く」という「watch」に相当するような英単語がないか、「傾聴する」などの日本語で対応語を調べましたがどうしても見つけることができませんでした。

その意味で言えば、「watch」は「意識を集中する」という意味では「look」と同様ですが、「向こうから情報がやってくるのが分かること」という意味では他動詞である「see」と同様という宙に浮いたような存在であると理解せざるを得ませんでした。

このことは、人間が聴覚よりも視覚の方をより重要視しがちな動物であることを表しているのかもしれません。