日本人と英語

言語習得プロセスのもどかしさ

2025年4月30日 CATEGORY - 日本人と英語

籍紹介ブログでご紹介した「英語ヒエラルキー」よりテーマをいただいて書いていますが、二つ目のテーマは「言語習得のプロセス」です。

本書において前提とされている英語の学習プロセスとしては、EMIすなわち「英語を学ぶ」というスタンスではなく「英語で学ぶ」といういわゆる「イマ-ジョン(英語環境にぶち込む)教育」を指しています。

そして、これは私たちランゲッジ・ヴィレッジが提供している「国内留学」のそれと基本的には同じものです。

ただし、大人になってからその環境にぶち込まれて効果を発揮するためには、「文法教育」からの「英文生成教育」が不可欠だということはこのブログを含めランゲッジ・ヴィレッジのサイトにおいてこれでもかというくらいに伝えてきましたので、全く同じことをやっているというわけではありません。

本書の最後には、本書の著者である佐々木テレサ氏の指導教官であった福島青史早稲田大学大学院教授による著者の研究に対するレビューが掲載されているのですが、その中でこの「文法教育」と「英文生成教育」のプロセスに対しての非常に分かりやすい解説があり、EMIとランゲッジ・ヴィレッジの国内留学の違いについての説明に有用だと思いましたので、少々本論から離れる形にはなりますが、以下にまとめてみたいと思います。

従来、日本の英語の授業では「文型積み上げ型」で行われてきた。

まずは言語を理解するために、言語の要素を学び、その要素を使ってできる言語課題である「タスク」をやらせる。例えば、「AはBです」という文型を学び、この文型を使用してできるタスク、例えば「自己紹介」をやってみるというもの。

この方法の問題点としては、そのタスクが必ずしも学習者に必要でないものがあることだ。そんなカリキュラムに従って学んでいくと、学習者自身が「言いたい文」を生成することができるようになるまでには非常に長い時間がかかってしまう。

要するに、「つまらない」から途中で「挫折」してしまう可能性が非常に高くなる。

「タスク」を目的、「言語知識」をそのタスクを達成するための材料とすれば、使えるようになりたいなら実際の場面に近いタスクをこなし、そのタスクに必要な文法、語彙、音声などの言語材料をその都度準備する必要があるのだ。

これを「タスク先行型」という。

EMIのようなイマ-ジョン教育は、まさにこの「タスク先行型」を採用し、手持ちの言語材料で実際のタスクを行うので、足りない材料がたくさん出て来て、最初のころはそのために「地獄」のような混乱が生じるが、それでもその環境から逃げられないため、苦しみながらも最後にはなんだかんだ言って、ネイティブや帰国子女に対する劣等感は感じつつも、それなりの実力を身に着けられるようになる。(それと引き換えに日本語の不安が生じるというのが書籍紹介の記事で見た本書の主張。)

これは、(それができなければ卒業できないため)逃げられないという意味では、何の言語も持っていない「赤ちゃん」に近い。

以上が、福島教授の指摘です。

私は、このEMIは別にして一般的な「大人の外国語学習」についての議論の際に、「赤ちゃんのように英語を学ぶ」こと(文法軽視)を提案する人はこの点で全く不合理な議論をしていることに気づくべきだと常々思っています。

一方で、日本の一般的な学校における英語教育ではそのような環境を与えることが物理的に不可能なため、「文型積み上げ型」を続けざるを得なく、努力が報われない人を大量に作り出す結果になってしまうという点で、当然ですがこちらも不十分と言わざるを得ません。

察しの良い方はここで、ランゲッジ・ヴィレッジが提供する「文法講座」と「国内留学」の両建ての教育の意味合いに気づいていただけるはずです。

まず、ランゲッジ・ヴィレッジの文法講座においては、あくまでも「文型積み上げ型」を基本としますが、文型を積み上げるのと合わせて、毎回毎回それまでに学んだ言語知識を使用してできるタスクを行います。

確かに最初の段階ではつまらない、だからもどかしい。

しかし、それを2泊もしくは5泊という非常に限定された期間の中で一気にやり抜いてしまうので、そのもどかしさは一時的なものにとどまりますので、「文型積み上げ」と「タスク」の統合を実現することができるのです。

その上で、イマ-ジョン教育である国内留学に移行することができるので、「タスク先行型」の初期にありがちな「地獄」の混乱をある程度回避することができるのです。

これが、ランゲッジ・ヴィレッジの「10年かけてもできなかった英会話が2週間でできてしまう」というキャッチフレーズのからくりなのです。

このことを今までも様々な方法で皆さんにお伝えしてきましたが、本書内の福島教授の「言語習得プロセスのもどかしさ」の指摘がランゲッジ・ヴィレッジの「からくり」の説明にとって非常に有益だと思いましたので、ここで引用させていただきました。

 

 

 

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆