
「使える英語」とは「記号接地した英語」
2026年6月4日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログでご紹介した「アブダクション英語学習法 #366」からテーマをいただいて書いていきますが、第一回目の今回のテーマは「本書の目的意識の理解」です。
まず本書の冒頭で著者は、「使える英語」とは「記号接地した英語」だと断言されています。
「記号接地」とは「記号=言葉」が「身体的な感覚や経験と結びついている(=接地)」ことを言い、すでに著者の別の著書「言語の本質」を代表ブログにて詳解しています。
その意味で言えば、母語の習得は「記号接地」そのものである一方で、私たち日本人の英語習得はほとんどのケースで「一対一の対応知識(死んだ知識)」が基本であることから、AIの学習形態に近いものと言えるかもしれません。
なお、「記号接地」の提唱者である認知科学者スティーブン・ハルナッド氏はそれが言葉(記号)を別の言葉(記号)で置き換えるだけで、いつまでたってもその言葉の本来の意味の理解にはたどり着かないという意味で、「記号から記号へのメリーゴーランド」であるとしています。
ここで問題となるのは、AIはそのメリーゴーランドをあまりに高速かつ幅広いデータベースをもとに行うことで、外観上は「記号接地」しているかのように見えるパフォーマンスを見せますが、人間はそれができないということです。
この問題を解決するためには私たちに与えられた選択肢は以下の二つです。
① AIの超高速で潤沢なメリーゴーランドに完全に頼り切ること
② 現在の鈍行メリーゴーランドを脱却して今ある英語知識を「記号接地」させること
本書では、私たちにとって楽な①が選択できるのにもかかわらず、多大な努力を伴う②を求める理由として、「リテラシー(知識の運用能力)」の獲得という英語の価値を挙げています。
それは、「異なる世界の見方」とも言い換えられますが、これを身につけるための題材としては英語でなければならないということではなく、中国語でもフランス語でも可能ではあるのですが、日本人にとって英語が最も汎用性が高くかつ学習環境が整っているということで英語限定とされています。
英語圏の人にとってhearやhappyなどの英単語が身体感覚とどのように接続しているのかを理解するために、今私たちが持っている「一対一の対応知識(死んだ知識)」を「記号接地(生きた知識)」に変える方法として「アブダクション英語学習法」を提案されています。
具体的には、たくさんの「生きた用例」から一つの単語の意味を広く深く捉える(点から面へ移行する)のに、ウェブ上に蓄積された大量のデータを教材とするため生成AIを活用するというものです。
この「AIにはできないこと」を「AIを利用して行う」という逆説的なところがこの学習の興味深いところだと思います。









