本質的に「音」に弱い日本人
2020年12月30日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「理想のリスニング」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは、「日本人の音に対する感度」です。
英語は日本人にとって外国語なのだからその外国語の音を聞くことが難しいのは当たり前ではないかと思われるかもしれませんが、ただ日本人にとっての英語のリスニングということになるとどうもそれは当たり前ではない様なのです。
本書においては、「日本人の音に対する感度」が他の言語、特にアルファベットを使用する言語を使用する人たちに比べて明らかに低いことが以下のように説明されています。
「実は英語圏の人は彼らが慣れていない言語、例えば日本語の名前でもわりに聞き取ることができる。彼らが慣れているのは特定の音や名前だけではなく、耳で言葉の音を聞くという行為そのもののです。考えてみれば、これはそれほど不思議なことではありません。英語ではアルファベットという表音文字を使っています。アルファベットの一つ一つには意味がなくあくまで音です。つまり、書き言葉でもまずは音に注意を向けさせるのが英語というシステムの特徴なのです。日本語の書き言葉はご存知のように表意文字である漢字を使っています。だから、言葉を受け取るときに私たちはしばしば漢字という視覚イメージを仲立ちとしています。名乗られた時も、音を聞くや否や漢字を思い浮かべるという人がほとんどでしょう。このことは射程の長い意味を持ちます。私たち日本語話者は、英語圏の人に比べると、より視覚的に言葉に接しているのかもしれません。」
このことを知ることで、今までずっと不思議に思ってきたいくつもの疑問がサーと霧が晴れるように解消されました。
以下に、私が個人的に抱いてきた三つの疑問を書きだそうと思います。
まず一つ目、昔、TOEFLの勉強をしていた時、世界的に見て日本人のリスニングの分野の平均点が突出して低かったことに疑問を持ったのを思い出しました。
これは、単純に日本人が読み書きの学習ばかりに力を入れていたということもあるのでしょうが、こういった日本人の「音に対する感度の低さ」が少なからず影響していたはずです。
そして二つ目、洋画を見るときに、字幕なしで見た時は何を言っているのか全く分からなかったのに、字幕を読みながら聞くと、意味だけでなく英語の文章が明確に頭に浮かんでくることをずっと不思議に思っていたのですが、その説明にもなっているように思います。
そして、三つ目、ビジネスでお会いした人のお名前について、名刺交換しながら挨拶した人と、名刺交換をせずに挨拶した人では、その方の名前をその場で記憶できる確率が圧倒的に前者の方が高いことを体感的に理解していたのですが、そちらについてもこれで説明できるような気がします。
これによって、私たち日本人は「漢字という視覚イメージを仲立ち」として言葉を受け取る性質を持っていると私は確信することができました。
逆に言えばそれだけ、リスニングに大きな弱点を本来的に有していることを自覚することができたと言えるのだと思います。