日本人と英語

イギリスではbillionは1兆だった

2022年4月3日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の新常識」からテーマをいただいて書いてきましたが、第十回目の今回で最終回となります。

今まで見てきた英語の「変遷」はすべて自然発生的に起こったもので、誰か特定の人が使い始めたことが明らかになっているものではありませんでした。

最終回のテーマとしては逆にそれが明らかになっている「billion」という言葉を取り上げたいと思います。

以下に、該当部分を本書より引用します。

「言葉の意味が時代とともに変化することはしばしばあります。でも1974年を境に、それまで2通りに理解されてきたある単語の定義が一本化されたことはとても印象的です。その単語とはbillionです。『10億』を意味することは誰でもご存知だと思います。しかしそれはもともとアメリカ英語の用法で、それまでイギリス英語では1兆の意味で使われていました。しかし1974年に、当時のハロルド・ウィルソン首相が、イギリス政府としてbillionをアメリカ英語の『10億』という意味で使うことを公式に確認し、それ以後、イギリスでも10億の意で用いられています。歴史あるイギリス英語がアメリカ英語に敗北した歴史的な瞬間、とも言われました。」

イギリスも含めた現在の英語圏(かつてのアメリカ)の数字の仕組みは以下の通りです。

10の3乗=thousand ⇒千

10の6乗=million  ⇒百万

10の9乗=billion    ⇒10億

10の12乗=trillion ⇒1兆

10の15乗=quadrillion⇒1000兆

10の18乗=quintillion⇒100京

一方、それまでのイギリスの数字の仕組みは以下の通りです。

10の3乗=thousand

10の6乗=million 

10の9乗=miliard  

10の12乗=billion bi-million つまり、6乗が2つで12乗の意味。

10の15乗=billiard

10の18乗=trillion tri-million つまり、6乗が3つで18乗の意味。

このように並べてみると、かつてのイギリスの方がシンプルでいいような気もしてしまいますが、前回も見たように言語はそもそも「道具」である以上、より頻繁に使用される方に変化していくというのは仕方のないことでしょう。