日本人と英語

イメージとしての白と黒

2022年3月30日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の新常識」からテーマをいただいて書いていますが、第四回目のテーマは「色のイメージ」についてです。

前回の「黒人は何と呼ぶべきか」の最後に私は、

「このスローガンの中に堂々と『(最初を大文字にした)Black』が使用されていますが、小文字だと『黒の』を意味する『形容詞』としての意味合いが強く感じられるのに対して、大文字は『固有名詞』としての意味を押し出せるためだそうです。」

とだけ書いて記事を終わりにしました。

多くの方はなぜ「形容詞」よりも「固有名詞」の方が差別のニュアンスをなくすことができるのかと疑問に思われたかもしれません。

今回はその疑問に答えるため、以下本書よりその理由の該当部分を要約・引用(一部加筆修正)の上、検討してみたいと思います。

「日本では従業員にやさしい企業を『ホワイト企業』、逆に酷使選別し使い捨てにする企業を『ブラック企業』と言います(いずれも英語としては通じません)が、英語でもwhiteがgood, permitted,safeの意味で使われるのに対し、blackはbad,dangerous,forbidenの意味合いが強い言葉です。Black Monday は『暗黒の月曜日』で1929年世界恐慌の先駆けであるニューヨーク株式市場の大暴落の日です。また、要注意人物たちの名簿であるblacklist ですし、違法な市場をblack marketと表現したりします。」

このように「形容詞」やそれを含む「名詞」としての「black」にはそれ自体にもともと「negative」な意味合いが存在してしまっています。

ですが、もともと「黒い肌」をしている「黒人」の人々の性質と、「black」がもともと含む「negative」な意味合いとは全く無関係であるため、「(最初を大文字にした)Black」という「固有名詞」をつくることで、もともと含む「negative」なイメージを排除したということです。また、

「blacklistやblack marketといった『形容詞』自体も差別意識を助長するとして言い換えを求める声が上がるようになり、blacklist はnegative listに、black marketはunderground marketという代替表現を使うようになっています。」

このことから、blackという「形容詞」や「名詞」自体からもそのような「negative」なイメージを排除する努力をしようとしていることが分かります。

私は、「言葉狩り」とも言えるような極端なPC(ポリティカルコレクトネス)に対しては距離を置きたいと考える立場である一方で、今まで黒人の方々に向かって「You black people(あなたたち黒人は、、)」というように直接的に呼びかけることにどこか躊躇する気持ちを感じていたのは確かです。

彼らに対して「You black people」と全くニュートラルな気持ちで呼びかけることができる様な環境をつくるためなら、少なくともblacklist がnegative listに、black marketがunderground marketのように全く違和感を感じない代替表現があるものについては、いくらでも積極的に努力すべきではないかと思うようになりました。

 

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