日本人と英語

「クラス」と「気品」

2020年5月6日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の魅力」から、いくつかテーマをいただいて書いていますが、第六回の今回が最終回です。

前回、前々回同様「単語の意味の範囲」についてですが、最終回の今回は「名詞」の範囲について見たいと思います。

私たちが普段当たり前のように使っている身近な言葉の中で、一見すると全く別の意味なのに同じ名詞を何の疑問も持たないで使用していることがあります。

本書では、その代表例として学校などの「class」と商品などのグレードを表す「class」をあげています。

以下にその解説部分を引用します。

「ラテン語ではローマ人を財産に応じて階級に分けた『区分』をclassisと呼び、英語のclassはこのラテン語から一般的な『区分・類別・階級』を表すようになりました。またそこから『学校で教えられる価値を持ったもの』という意味が生じて、『学校の授業』にもなりました。

・a world-class player(世界クラスの選手)・the upper class(上流階級)・a history class(歴史の授業)

さらにはルネッサンス期の人々が教室で学ぶ価値のあるものはギリシャやローマの最高水準の作品だけだと考えたことから、classics(古典)なるものが生まれました。さて、『気品』のことを英語ではclassと言い表しますが、『質の高いものとして分けられたもの』→『熟練の技』→『美質』→『気品』という変遷をたどりました。

・He is a class tennis player.(彼は熟練の技をもったテニス選手だ。)

・The Japanese restaurant has real class.(その日本料理店は本当に上品だ。)       

・You can’t buy class.(気品は買うことができない。)

ただし、『気品・上品』の意味で用いる場合は『不可算名詞』扱いすることに注意してください。

・He doesn’t have any class.(彼は全く品がない。)

・He doesn’t have any classes.(彼は授業がない。)」

英語が使われることによって、だんだんと姿を変え、変わった後もその片鱗をちょっとだけ残している。それを丁寧にたどるというのが言語の研究であるならば、まさに、言語学は考古学だなと思います。