日本人と英語

グローバル社会での日本人の強み

2022年4月10日 CATEGORY - 日本人と英語

実に二年ぶりに日本における主要ビジネス雑誌における「英語関連」の内容を特集として書籍紹介ブログにてご紹介した「プレジデント2022年4/29号」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「非英語文化圏の強み」です。

このブログではこれまで何度も「英語を母国語としないことのメリット」について考えてきました。

それらの中で明らかにした私の結論は、どれだけ英語が世界のグローバル化のプラットフォームとして存在感を増していったとしても、英語文化という一つのモノサシだけでは世界から「多様性」が欠如してしまうということでした。

そして、日本語のようなマイナー言語文化の存在こそが世界に刺激を与え、世界をより豊かなものにすることができるということでした。

本誌の中で、日本企業のグローバル化指南の草分けでもあるドリームインキュベータ―の創業者 堀紘一氏がそのことを非常に分かりやすい例で紹介してくれていました。

彼は、ハーバードビジネススクールで成績上位3%に与えられるベイカー・スカラーという称号を授与された最初の日本人なのですが、英語というハンデを抱えながらのネイティブのクラスメートたちとの競争の中で、次のような経験をお持ちです。

「あるケーススタディにトニー・サルト―という人に関するものがありました。トニーには人望があり、工場のメンバーは皆トニーの言うことをよく聞くのですが、時々会社の意見とは異なることを言う。このような場合どうするべきかという問題です。ほとんどの学生はトニーをクビにすればいいと答えました。クビにすればトニーはいなくなり、会社のマネージャーの言うことがそのまま正しく伝わると。それに対して私は、『トニーをクビにするのは会社にとって損失です。なぜかと言えば、トニーには人望があり、他の社員たちをまとめていく力があります。トニーをマネージャーにすれば一つ上のレイヤーから物事を見られるようになり、考え方も言い方も変わるでしょう。トニーの人望は変わらないのだから、会社にとってはトニーをクビにするよりも生かしたほうが何倍も役に立つ』と伝えました。二十何年間このケースをおしえてきた教授は、トニーを『生かす』回答は一度もなかったと言いました。それはアメリカとは異なる日本人の強みであり、日本のものづくり現場で生産がスムーズに進む原点のような考え方だね、皆もコウイチの意見をよく聞いた方がいい」

私もアメリカで生活をする中で、このようなアメリカ人と日本人の根本的な考え方の違いに気づかされることは結構ありました。

何というか、アメリカには一様に「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」という信長的な考え方がベースにあるような気がします。

しかも、普段はいたってやさしい近所のおばあちゃんが、何か物事を決めるような時にそのような決断を全く悪気もなくやってのけてしまうのです。

つまり、こちら側(この場合はマネジメント側)にとって最適な回答とは、あくまでも「こちら側」にとってのみなのです。

おそらくこれは創造主は全知全能の神であり、自らが信じる神は必ず唯一絶対の答えを持っているはずだということをどこまでも信じるからなのだと思います。

しかし、私たち日本人は大方、「盗人にも三分の理」という言葉があるように双方の間に答えが存在する可能性をまず考える癖がついているように思います。

ただ、ハーバードの教授がアメリカ人として想像すらしなかった堀氏の回答を絶賛したのは、「当時の日本の製造業の生産性が世界で最も高かった」という事実に基づいて論理的に考えた結果であり、現在の日本の経済状況で同じ回答をしたとしてもそのような納得は得られないとは思います。

日本経済の現状をみるに、その強みである日本文化が「泣かぬなら泣かせてみよう」ならぬ「泣かぬなら泣くまで待とう」に傾きすぎていつまで待ち続けるのかと心配になってしまうのも現実ではあります。

 

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