日本人と英語

仮定法過去はなぜ現在なのに過去なのか

2019年8月25日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の新常識」よりテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「仮定法過去」についてです。

「仮定法過去」。

この文法項目については、中学文法ではないので、「中学三年分の英文法」の講座の中で正式には取り上げていませんが、しかしさらっと次のように紹介するようにしています。

「現在において現実とは反することを仮定する表現を『仮定法過去』と言います。例えば、『私が鳥だっら、空をとべのに。』という内容を英語で言う場合には、『If I were a bird, I could fly.』となります。」

そして、その際に私自身かなり興奮しながら、次のようなことを併せて伝えています。

「日本語も英語も、赤字で表示したようにどちらも過去形の形をとっていますが、意味を考えていただければ、これは過去ではなく、現実に反する『私=鳥』という仮定の『現在』の話であるということは明確です。とても面白いと思うことは、日本語と英語という全く別の場所で成立して、近代まで何百年も交わりのなかった二つの言語なのにもかかわらず、なぜか現在の時間軸において現実とは反することを仮定するために、『過去形』を使用するという事実です。これはものすごく不思議な偶然だと思うのです!」

この興奮を私と同じレベルで共有してくださるのは、15~20%くらいにすぎませんが、そこまでではなくとも、ほとんどの方はこのことを不思議に思ってくださいます。

本書には、実に驚くべきことに、この「不思議な現象」の理由について書かれていましたのでここにその部分を引用します。

「どうして想像の世界(現実とは反する)の話をするときに過去形を使うのかというと、『距離感』が共通しているからです。現在と過去には時間的には距離がありますし、現実と想像にも意識的な距離を示す仮定法でも使っているのです。」

こうやって、さらって書かれてしまうと、感動がそれほど伝わりませんが、私は今までこの理由について何度も何度も自ら理屈を絞り出そうとしてきましたが、できず諦めていましたので、このような指摘を本書で発見した時には本当に感動しました。

ちなみに、もう一つの疑問、「なぜ本来は、『was』ではなく『were』なのか?」についても次のように説明してくれています。

「(実は、最近では、仮定法過去として、If I was with you, I would be happy. というようにwereではなくwasも多く使われるようになっているのですが、)動詞の(直説法)過去と仮定法過去の形はもともと別で、『仮定法過去では動詞の過去形を使う』のではなく、『仮定法では仮定法過去の形を使う』が正しいのです。仮定法では、人称に関係なく同じ形を使っていて、中英語と呼ばれる時代(1100-1500年ころ)に仮定法過去のbe動詞はwereになりました。そして、それが現代に続いているのです。ではなぜ、If I was with you, I would be happy.という正しくない形が普通に使われるようになってきたのかというと、be動詞以外の動詞の仮定法過去が、直説法(現実の世界の話をするときの動詞の形のことです)の過去形と同じ形だからです。これによって、仮定法過去は動詞の過去形という意識が強くなり、be動詞も直説法の過去形と同じでいいのでは、つまり主語がIならwasでもいいのでは、となったのです。」

 

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