日本人と英語

名は体を表すか

2018年5月23日 CATEGORY - 日本人と英語

以前に書籍紹介ブログでご紹介した「英語の素朴な疑問に答える36章」からテーマをいただいて数回にわたって書いていきたいと思います。

私が書籍紹介で本書とその前の「英語は教わったように教えるな」をご紹介したのは、英語教育の中でそもそもおかしいことが当たり前に行われていることに対して「おかしいではないか」と指摘し、批判するだけで終わらずに「対案」を示す著者の姿勢に感動したからです。

世の中には、「おかしい」と指摘できる人はそれなりにいらっしゃいますが、ではどうしたらいいかという「対案」を出せる人となるとその数は非常に少なくなります。

その意味で著者はまさに「戦う英語教育学者」だと思います。

そんな著者の本書からいただく第一回目のテーマは、「文法用語」についてです。

本書において著者は、文法用語、すなわち文法のルールの基礎である名前が、体すなわちそのものを的確に表していないのであれば、それを信じて学習する者にとってはそれは障害でしかなく、ならばそんなものは最初から排除してしまったほうがいいと言っています。

著者の次のような指摘が非常に印象的でした。

「ある中学生からの質問である。『We have known each other for years.のhave knownの部分は現在完了と習いました。ですから私はその動作は今は終わっているという意味だと思ったら、have known は【継続】を表すと先生が仰ったのでびっくりしました。終わっているのに続いているとは全く意味不明です。』迂闊にも私はこの質問をいただくまでこの疑問に気づかなかった。以下の完了形についての議論はまさにこの中学生の質問がきっかけになったことを白状しておく。」

そもそも、完了形には継続以外にも、完了と経験の意味があるとされますが、ではそれが過去形とどのような違いがあるのか、「完了形」であるところの確実な定義を理解した上でこの用語を記憶させられているわけではないケースがほとんどだと思います。

この完了形に限らず、日本語の英文法用語にはその実態(形)と名前が一致しにくいものが数多くあり、これが日本人を英語嫌いにしてしまう原因ともなっています。

ランゲッジ・ヴィレッジの文法講座においてはまさにここの部分、すべての文法項目の定義とその名称の関係性についてまでも、理由とともに説明し、それを使いこなすための助けにするということをその存在意義としています。

ですから、著者のこの姿勢には非常に親近感を持ちつつも、それは当たり前のことではないかという気持ちが強いことも事実です。

教科書に書いてあることだけを教える、すなわち「教えられたように教える」のであれば、その人の教師としての存在意義がなくなってしまう。

その存在意義を全うするためには、たとえ長く使われた名前であっても、その名前が体を表さないならば、自らが体を表す命名をするぐらいの気概を持つべきかと思います。

つまりは「英語は教えられたように教えるな」という姿勢が重要となるのです。

ですが、これを実現するためにはよほど英語とそれを学ぶ受講者に対する「愛情」がなければできないことではあります。

教えるということを仕事にするには、そこに「愛情」があるという条件だけはデフォルトで持っていたいものです。

長くなりましたので、完了の継続用法、すなわち「終わっているのに続いている」とはの答えは次の回に譲ります。

 

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