日本人と英語

所有格「’s」と「s’」の由来

2021年7月16日 CATEGORY - 日本人と英語

今回から10回にわたって、書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の『なぜ』2」からテーマをいただいて書いていきたいと思いますが、第一回目のテーマは「sもしくは’s」についてです。

所有格の表現には基本的に、前置詞「of」を用いるものとアポストロフィーs「’s」を用いる方法の二つがあることはよく知られていることだと思います。

前者の「of」については以前に記事にてご紹介していますのでこちらをご参照いただくとして、今回の記事では本書より所有格の後者「’s」と複数形の「s」について書かれている部分を引用したいと思います。

「1100年頃から1500年頃までの英語を中英語と言います。このころ、英語に大きな変化が生じました。古英語の複雑な屈折(格の変化)が同じ形にまとまっていったのです。kingを意味する古英語 cyningにはその格の変化として主格のcyning、対格のcyning、属格のcyninges、与格のcyningeがありました。主格は今でもありますが、対格は現在の直接目的語を作る目的格、属格は現在の所有格、与格は現在の間接目的語を作る形に相当する形を意味します。それが中英語になると格変化は単数ではkingesという属格の形だけが残り、複数では全てkingesとなりました。現代英語になってその単数形の属格もなくなりましたが、所有格の意味だけは語順では伝わりにくいので単数は『’s』複数は『s’』としたのです。以上が所有格の’sと複数のsの由来です。(~参照~を参照のこと)」

~参照~

◆古英語

(単数)主格: cyning 対格: cyning 属格: cyninges 与格: cyninge

(複数) 主格: cyningas 対格: cyningas 属格: cyninga 与格: cyningum

◆中英語

(単数)主格: king 対格: king 属格: kinges 与格: king

(複数) 主格: kinges 対格: kinges 属格: kinges 与格: kinges

現在のような固定的な「語順」を持つ現代英語と異なり、古英語時代の動詞や名詞が頻繁に語尾変化する性質によって、日本語のようにアメーバのような文型の一定しない言語であったことは、以前の記事でも取り上げていましたが、実際に古英語の名詞には単数と複数それぞれに主格から与格まで4つの格があり、なおかつ複数形にも同じように4つが存在していたという事実を目の当たりにすると、その複雑さに驚かされます。

やはり、言語学は考古学ですね。

 

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