日本人と英語

母国語と外国語の根本的な違い

2020年2月7日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「赤ちゃんは言葉をどう学ぶのか」からテーマをいただいて議論をしていますが、第五回目のテーマは、「母国語と外国語の根本的な違い」についてです。

第二回目の「赤ちゃんは大人より努力家」の記事において、多くの大人が「赤ちゃんが語学の天才で何の苦労もなく母国語を獲得してしまう」と思っていることを単なる「思い込み」であるとしてきっちり否定しました。

今回のテーマである「母国語と外国語の違い」が、まさにこの記事で指摘した大人がいくらやろうとしても決してできない「赤ちゃんの努力」によって生じているということについて明らかにしたいと思います。

以下にその部分を引用します。

「赤ちゃんは大人の常識を知らないので、一つ一つの単語の意味をめぐって試行錯誤を繰り広げていくことになります。単語を覚えるのに時間がかかるわけです。この思考錯誤のトンネルを抜けるには、50~100の単語を話せるようになるまでの経験が必要であるようです。この『経験』の中にはもちろん、一つ一つの単語の意味を試行錯誤して見つけていく『経験』もあるでしょう。また、たくさんの文を聞くうちに、文にどのように表れるかという観点から単語はいくつかの種類に分かれ、種類ごとにどのような意味かが決まっていることを発見するということもあるでしょう。これらの『経験』があってはじめて可能になるのが、この後にやってくる語彙爆発なのです。こうして2歳になるころ、子供の単語数は平均で200程度になります、大人が本気になって外国語の学習に取り組むなら、200語はそんな長い時間はかからない単語数です。大人の単語学習の方法は、単語と意味(訳語)との結びつきを覚えていくだけのものだとすれば、それは子供のこの『経験』の底力には到底かないません。子供の場合は、誰にも教えてもらえないまま、自分でその言語の音の聞きわけ方を学び、発音の練習をし、単語の種類やその意味の学習の仕方まで見つけ、そうやって築きあげてきた母語の基盤に根差した200語だからです。」

このことは以前にも指摘した以下のたとえ話に合致します。

「大人は地図(文法)をもってジャングルを効率的に脱出するのに対して、赤ちゃんはひたすらジャングルをさまよって痛い目を見ながら三年くらいかかって脱出する。」

これをもって、大人は効率的で、赤ちゃんは非効率的な学習法をとると評価することもできますが、それは「効率」が結果的に良くて、「非効率」が悪いという構図とは違うということに私たちは気づかなければなりません。

赤ちゃんは、この「非効率」から逃れられない運命を受け入れた結果、「母語の基盤」というその運命を受け入れる以外には手に入れることのできないものを手に入れることができるということです。

そして、この運命とは無縁の大人の学習は、それが最大限に成功したとしても、母語獲得のレベルと比べれば「そこそこ」のレベルにとどまらざるを得ないということです。

やはり、「赤ちゃんの努力」が鍵であることは間違いありません。

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆