日本人と英語

なぜ学校では発音記号を教えないのか

2020年6月19日 CATEGORY - 日本人と英語

今回より書籍紹介ブログにてご紹介した「英語コンプレックス粉砕宣言」からテーマをいただいて議論をしていきたいと思います。

第一回目のテーマは「発音記号」についてです。

私は、自らが主宰する「中学三年分の英文法を2泊3日で血肉にする合宿」の中で、「発音記号」を20分で「ほぼ完璧」にする講座を設けています。

そして、必ずその講座の中で「今まで学校で発音記号を習った人はいますか?」という質問をするのですが、ほぼ9割以上の方が手をあげません。

そこで、現在の中学校の学習指導要領を調べてみましたら、

「現代の標準的な発音」を「発音と綴りとを関連付けて指導すること」、そして「音声指導の補助として,必要に応じて発音表記を用いて指導することもできる

という記載がありました。

ということは、現実には「音声指導」において発音記号は「使っても使わなくてもよい」という位置づけであり、その結果、発音記号、カナ表記か、あるいは別の表記を使うのか、教師の自由ということになっているのでしょう。

しかしながら、私の講座での上記の質問の結果からすれば、発音記号はほとんど「使っていない」ということが分かります。

私に言わせれば、発音記号なんて、20分程度の講義で多くの日本人が「全く意味不明」だと思っているレベルから「ほぼ完璧」にできるくらいに高めることができるシンプルなものなのに、なぜやらないでいつまでも「全く意味不明」なものにしておくのか理解できません。

本書においても、著者のお二人は「発音指導」については以下のようにその重要性を強調されています。

「最大の問題は基礎的な音の出し方をどう教えるか、です。ここを外すと英語にならない、という音があります。それを小学生のうちから学んでおけば、メリットはとても大きい。ところが、そういう指導のできる教員がほとんどいないのが現状です。」

「しかもそれは、ネイティブスピーカーが教えてもダメ。母語だと意識しないで話しているし発音もできるので、できない人にうまく説明できません。発音の指導で決定的に重要なのは、音声学の知見だと思います。なのに、教職課程でこれを必修にしないのには納得ができません。」

「ただし、これはネイティブスピーカーのような発音になろうということとは違います。それぞれの国の訛りがあってもいい。でも、『ここを外すと英語にならない』というポイントを外さないことをきちんと教えられることです。」

私が、なぜ「発音記号」を20分程度の講義で「ほぼ完璧」に教えられるのかと言えば、まさに「『ここを外すと英語にならない』というポイント」のみを効率よく教えるからです。

つまり、日本人には「どうしても発音することが無理なもの」と「頑張ればできるもの」とを区別して後者だけを徹底的に分かりやすく教えるのです。

ではなぜ、多くの学校の先生がそれをしないのかという理由ですが、一つは上記の「教職課程でこれを必修にしない」こと。

しかし、仮に教職課程でやらなかったとしても、こんなものは私がやったようにやろうと思えば独学でもすぐに何とかなるものです。

にもかかわらず、ほぼ9割以上の先生がやらないのは、学校教育という場が「どうしても発音することが無理なもの」を無理だと生徒の前で断言して、「頑張ればできるもの」だけをやるというスタイルをとることを良しとしないという風潮があるからではないかと思います。

それは悪い意味での「完璧主義」と言えるかもしれません。

しかし、生徒の利益を考えれば、どちらをとるべきか答えは決まっていると私は思います。

 

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