日本人と英語

全ては第一言語ありき

2018年6月17日 CATEGORY - 日本人と英語

先日ご紹介した「その『英語』が子どもをダメにする」からいくつかトピックをいただいて考えていきたいと思います。

第一回目は「外国語学習における第一言語の意味合い」についてです。

このブログでは何度も繰り返し、「小学校英語」導入に反対し、その理由として本来小学校では、日本人の思考の基礎となる日本語の学習に時間を費やすべきであり、単なるアプリに過ぎない英語などに使用する時間はないはずだからということをお伝えしてきました。

本書では、この問題に対して以下のような非常に厳しい指摘がされていました。

「カミングズはバイリンガルの研究において、子供の第二言語能力は第一言語能力によって決まってくるという理論を打ち出しています。第一言語が十分に発達しないうちに第二言語にさらされると、日常会話をするようにはなっても読み書きがきちんとできるほどには習得できないと言います。それどころか、第一言語の発達も阻害され、2つの言語ともおしゃべりレベルにとどまり、思考の道具として使える程に発達しなくなるというのです。」

つまり、まだ日本語の運用能力が発達途上にある小学生に英語を学ばせるというのは、「意味がない」「ムダ」というだけにとどまらず、むしろ日本語能力という最も重要視すべき部分に「ダメージ」を与えてしまうという指摘です。

そして、そのことを一番に理解している人は、帰国子女を子供に持った親御さんや帰国子女として育った当人だと言います。

「各種世論調査を見ると、子供を持つ日本の親の多くは小学校から英語を学ばせることに賛成のようですが、こうした切実な事情を身をもって経験している帰国子女を対象とした調査では、子どもが外国語を学び始めるのに適当な時期として、圧倒的多数が『母語が確立してから』と答えています。このことを重く受け止める必要があるのではないでしょうか。」

彼らの多くは、自ら望んで帰国子女になったわけではありません。

家庭の事情、企業の事情によって仕方がなく、日本語から遠ざけられ、英語に触れざるを得なくなってしまった結果、日本語、英語のどちらでも深い思考ができなくなってしまう「セミリンガル」の問題を程度の差はあれど抱えてしまっているのです。

それを、そのような避けられない事情がない子どもたちに敢えて時間とコストをかけてそのようなリスクにさらすことについてもっと親の側がしっかりと考えなければなりません。

是非、落ち着いてお考えいただきたいと思います。

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