日本人と英語

英語テストの作り方

2018年7月27日 CATEGORY - 日本人と英語

以前に書籍紹介ブログでご紹介した「全解説 英語革命2020」からテーマをいただいて数回にわたって書いていきたいと思います。

第一回目の今回は、一つのテストを多くの受験者が一斉に受験するという現在の大学入試センターの英語試験システムから、いくつかの民間試験を受験する大学の指定に応じて受験するシステムに変わることによって生じる新しい問題について考えてみたいと思います。

その問題とは、テストの「測定可能範囲」と「対象使用言語領域」に関するものです。

これらは、その試験によって測定できる言語レベルと言語分野が決まってきてしまうので、今までのセンター試験のように一律に受験をさせて横並びで評価するということが難しくなるという問題です。

まず「測定可能範囲」とは、それぞれのテストにおいて想定される受験者のレベルのレンジ(範囲)のことです。

例えば、認定された7つの民間試験でも、そもそも英検は5級から1級までレベルの違うテストですし、TOEFLとTOEICでは全くレベルの違う難易度のテストとなっています。

ですので、それぞれの想定レベルから外れると測定能力が下がり信頼性が確保されません。

極端な話、英検5級レベルの人も3級レベルの人も、難易度の高いTOEFLを受験するとどちらにしてもまったく太刀打ちできず、ほぼ当ずっぽで回答することになるため、5級と3級のレベル差が適切に測定されないという問題が生じます。

次に「対象使用言語領域(Target Language Use)」とは、それぞれの試験がどのような場面で使われる英語を想定したものなのかということです。

TLUは①ジェネラル②アカデミック③ビジネスの大きく三つに分けられます。

英検は、使用領域を特定しない一般的な英語使用を想定しています。また、TOEICはビジネスでの使用を想定していますし、TOEFLは、米国の大学での授業に対応できるかどうかを評価するものですからアカデミックでの使用を想定しています。

英語(言語)テストというものは、必ずこの二つのことを勘案して作られるべきものです。

このように見てくると、いままで日本の大学入試ではセンター試験という想定される受験者のタイプが一つに定まった試験と二次試験として各大学が自らが欲しい学生のレベルに合わせて作成する試験の二通りしかなかったので、「測定可能範囲」と「対象使用言語領域」という発想自体になじみがない受験者はもちろんのこと指導者も多かったと思います。

このような状況の中で、大学入試センターが管理する統一試験においてレベルと分野の異なる複数の民間試験を取捨選択するという仕組みが導入されることになったのです。

現時点において、大学入試センターが行う統一試験として、TLUがビジネスであるTOEICが認定されたということには大きな違和感を持たざるを得ません。

そして、これがこれからの大学入試統一試験のあるべき形であるという共通認識が出来上がっているともとても思えません。

このように、英語試験改革にはこれらも含めて、まだ解決がなされていない課題が多く、2020年の実施には時期尚早だという感を強くせざるを得ませんでした。

 

 

 

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